書店での立ち読み思案

漫画に愛を叫んだ男たち トキワ荘物語  
 長谷邦夫が「漫画に愛を叫んだ男たち」なる新刊を出していたので、トキワ荘グループの変り映えしない回顧録かと思いきや、赤塚不二夫との訣別を主に、藤子不二雄のコンビ解消に藤本の家族側の影や、マネージャーとのトラブルがあったという生々しいハナシが書かれてあることに驚く。「噂の真相」の記事を参照するまでもなく、金の問題でのコンビ解消であろうことはリアルタイムでニュースを聞いた小学生の頃から察していたが、近い立場の人間から初めて漏れたハナシだけに興味深い。寺田ヒロオの死去も、安孫子や赤塚はかなり柔らかく書いていたが、テラさんが自殺同然の隠遁生活に入り、酒を飲みつづけ、食事を殆ど取らない状況で、テラさんの家族から赤塚に助けて欲しいと要請受けるも、赤塚が自分も同じアルコール依存症だからと放置する件なんぞ、「まんが道」や「トキワ荘青春日記」で生活に貧窮し、トキワ荘を出るしかない状態に置かれた赤塚がテラさんから金借りて凌げたハナシを思い出し、複雑な心境に。言ってしまえば恩を忘れた赤塚氏ということになるのだが、人間関係なんてものは―30年、40年も経てば変節していって当然なのだろう。森安直哉の悲劇も同様か。リアルトキワ荘秘話が今後漏れて来るのかな、と考えると知りたいような、知りたくないような。松葉のラーメンが実はそれほど美味くなかった程度の真実なら良いのだが。今度買おう。




「季刊InterCommunication」最新号の『批評が消えゆく世界の中で−映画・運動・顔 青山真治×蓮實重彦』が面白い。蓮實に関連して言えば阿部和重(高校生の頃、コノヒトと阿部嘉昭を混同していた時期があった)の初映画評論集「映画覚書Vol.1」にも対談が収録。「nobody」の蓮實重彦×中原昌也対談といい、この世代が蓮實の位置を継承か。個人的には蓮實の正統な後継者は町山智浩柳下毅一郎だと思うが。それにしても淀川長治は蓮實が言うように『継承不能な突然変異』だと思う。

雑誌

1)「庵野秀明 KAWADE夢ムック」 

庵野秀明 (KAWADE夢ムック)
 

 

 義務感的に購入。内容は薄い。このシリーズも波があって所有している「黒澤明」「淀川長治」「小津安二郎」「赤軍」等はそれなりに資料性もあって悪くない。しかし、「円谷英二」や今回は執筆者の人選外しまくり。結局ハニメの太鼓持ち企画でしかない。体系的に庵野フィルモグラフィーとアニメーター、監督、脚本家、編集者としての彼を分析するぐらのことはしてほしい。



2)「美術手帖 2004 6」 

 庵野秀明とdigi+KISHIN、浅野忠信宇川直宏の対談掲載。デジキシの「ラブ&ポップ」への言及や「花とアリス」へのコメントが興味深かった。又、フィルムとデジタルの差異、使い分けのハナシが面白かった。河出のより遥かに良い。

VIDEO

1)「dolls」 
2)「茄子 アンダルシアの夏」 

Dolls [ドールズ] [DVD] 茄子 アンダルシアの夏 [DVD]
 新宿TSUTAYAのビデオ中古販売で購入。今頃中古ビデオ感はあるものの、先々週のルノワールの「トニ」を300円で購入できたりするわけで。「dolls」は全く不要な愚作だが、北野武作品は「その男、凶暴につき」から「BROTHER」迄ビデオで所有しているのだから買わない訳にはいかず、渋々購入。「座頭市」からDVDに移行したので、以後はDVDで。しかし、「HANA-BI」以降、どんどん低調になり、底にたどり着いたと思わせる「dolls」で北野武は終わったと思ったが。「座頭市」で初めて興行的な大成功を収め、監督生命の延命を計ることができた。しかし、これは自身も自覚しての延命処置で、あくまで座頭市というハコを利用しただけのハナシで、依然北野武の凡庸化の流れは止まっていない。次回作が既に決定している「座頭市2」になるのか、別作品になるのか不明だが、何とか挽回してほしいと思う。大体商業監督ではないのだから、毎年無理して新作を作る必要はなく、作りたいものだけを作れば良いのに。