ダグラス・サークは近くて遠かった

 年末に少し整理したら、不要な本やビデオが出てきたので、部屋が狭いのだからと売り払うべく袋に詰めて両手で抱えて持って行く。真剣に売り払えばもっと減らすことができるのだが、とりあえず単行本で購入したものの、後に文庫で買い直したやつとか、ビデオで持ってたけど後でDVDを買ったようなダブりものを処分する。16点で1200円ほど。まあ、こんなもんか。
 映画美学校ダグラス・サーク上映会に行こうとしていたが、1本目の『僕と祭で会わないかい?』には間に合わず、仕方なく次の回からの参加とするが、ズルズルと遅くなり、東京駅に着いたのが上映開始5分前だったので、走れば何とかなりそうだったが、近くまで来て急に気が変わって引き返す。今から行ってもたぶん混んでるし、アタマが欠けたら嫌だと思い始めると途端に気力を無くしたので。再び電車に乗るが、後になってアタマに短篇を流すと書いてあったのを思い出し、間に合ってたかもと思うも、アフター・カーニバル。
 こんなことなら、誘われていた国立新美術館ランドウォーカーを見物に行っておけば良かったと後悔するも、ではと映画を観るのも日曜日の混んだ映画館は嫌いなので、それでも出てきたのだからと無理矢理充実させる為に中野へ行き古書店で、床に幾つも山積みされた『シナリオ』のバックナンバーを一山ずつ崩して行って、掘り出し物を探すという非常に暗い作業に没頭する。100円の気安さから、どんどん買ってしまい、結局300円、500円台のも何冊か含めて、『映画評論』も100円のやつを買ったりしている内に、16冊で2600円ほどになる。結局、モノを減らす為に売り払って得た金以上を遣って、また荷を持ち帰る賽の河原状態となる。
 用件があったので高円寺の友人宅まで歩いて向かう途中から、薄いビニールに入れられた『シナリオ』が重い重い。友人宅で袋を貰おうとしたら、JJにするから、と言われ、何のことやねんと思っていたら、本を紐で縛ってあげるから、これで持ち歩くと植草甚一みたいでしょ、ということらしい。わかりにくい。
 オービスに寄って、ハミングバードのピンクか佐藤寿保の『暴行クライマックス』『人妻コレクター』でも借りようとしたが、佐藤寿保はレンタル中なので、ではハミングバードのピンクをと思ったら、近日半額レンタルやるらしいので、その時に纏めて借りることにする。

 『シナリオ 1962.08』『シナリオ 1965.07』『シナリオ 1967.06』『シナリオ 1969.04』『シナリオ 1970.11』『シナリオ 1973.01』『シナリオ 1976.02』『シナリオ 1977.03』『シナリオ 1977.10』『シナリオ 1979.03』『シナリオ 1985.01』『シナリオ 1985.03』『シナリオ 1986.05』『シナリオ 1962.08』『シナリオ 1962.08』『映画評論 1972.07』『映画評論 1973.09』

2)『シナリオ 1962.08』 (シナリオ作家協会)  
3)『シナリオ 1965.07』 (シナリオ作家協会)  
4)『シナリオ 1967.06』 (シナリオ作家協会)  
5)『シナリオ 1969.04』 (シナリオ作家協会)  
6)『シナリオ 1970.11』 (シナリオ作家協会)  
7)『シナリオ 1973.01』 (シナリオ作家協会)  
8)『シナリオ 1976.02』 (シナリオ作家協会)  
9)『シナリオ 1977.03』 (シナリオ作家協会)  
10)『シナリオ 1977.10』 (シナリオ作家協会)  
11)『シナリオ 1979.03』 (シナリオ作家協会)  
12)『シナリオ 1985.01』 (シナリオ作家協会)  
13)『シナリオ 1985.03』 (シナリオ作家協会)  
14)『シナリオ 1986.05』 (シナリオ作家協会)  
15)『シナリオ 1985.07』 (シナリオ作家協会)  
16)『映画評論 1972.07』 
17)『映画評論 1973.09』

 投売りされていた中から必要なものを選り出して購入したのは上記の通り。収録作は下記参照。4)5)は200円。6)は360円。10)は525円。それ以外は全て100円。
 そーいえば、田中登の『玉割り人ゆき 西の廓夕月楼』の掲載された『シナリオ』があったので、欲しかったので即購入しようとしたら、法外な1500円と書いてあって呆れる。こんなものは100〜300円。せいぜい600円内で買うもので、1500円も取ってどーするという。
 2)『放浪記』(井出俊郎・田中澄江)、『真昼の罠』(高岩肇)、『うちのにいちゃん』(楠田芳子)。
 3)『スパイ』(船橋和郎)、『さいはてに愛を』(井出雅人)、『精神薄弱児』(勝目貴久)。
 4)『西鶴一代女』(依田義賢)。
 5)『地獄変』(八住利雄)、『恋にめざめる頃』(成瀬巳喜男大野靖子)。
 6)『日本のさけび』(柏倉敏之・吉田憲ニ)、『銭ゲバ』(小滝光郎・高畠久)、『無常』(石堂淑朗)。
 7)『午前中の時間割り』(中尾寛治・浜田豊荒木一郎・羽仁進)、『赤い鳥逃げた?』(藤田敏八ジェームス三木)、『必殺仕掛人』(国弘威雄)。
 8)『裸足のブルージン』(大和屋竺長野洋藤田敏八)、『妻と女の間』(八住利雄)。
 9)『青春の門 自立篇』(早坂暁浦山桐郎)、『竹山ひとり旅』(新藤兼人)、『大江戸浮世絵風呂』(田中陽造)。
 10)『原子力戦争』(鴨井達比古)、『地獄の天使 紅い爆音』(田中陽造荒井晴彦内藤誠)、『新宿馬鹿物語』(神代辰巳)、『肉体の悪魔』(白坂依志夫)。
 11)『判決 はぐれた鳩』(高橋玄洋)、『本日ただいま誕生』(下飯坂菊馬)、『赫い髪の女』(荒井晴彦)。
 12)『Wの悲劇』(荒井晴彦澤井信一郎)、『ねずみ小僧怪盗伝』(ジェームス三木古田求野村芳太郎)。
 13) 『カポネ大いに泣く』(大和屋竺木村威夫・鈴木岬一)、『ユー・ガッタ・チャンス』(丸山昇一)。
 14)『火宅の人』(神波史男深作欣二)、『スタア』(筒井康隆内藤誠桂千穂)、『蕾の眺め』(早坂暁)。
 15)『友よ、静かに瞑れ』(丸山昇一)、『結婚案内ミステリー』(小野竜之助)。
 16)『山口崇テキヤになる』(藤田傅)、『早春』(イエジー・スコリモフスキー)。
 17)『ちいさすぎてはいらない!』(田辺泰志)、『千年戦争』(F・アラバール)。
 『映画評論』は、安ければ何でも買うようにしているが、やはり面白い。田中陽造の『大和屋竺の白けた領域』とか、『血を分かちあう友はいずこに ―滝田修を語る―』(土本典昭・須藤久)とか。
 ちょっと中身も見ずに買った中で面白いと思ったのは、『緊急特集 創造社を追悼する!!』で、創造社解散が発表された直後の号なんだなと。書いてるのが小川徹佐藤重臣で、ゴールデン街の噂話の垂れ流しだから、実にいいかげんなハナシが書かれている。ただ、こういうものの中に後世の映画史には残ってこないエピソードの多くがあるのだから、興味深く読む。信憑性はともあれ、石堂淑朗が創造社を脱退した際には本当は田村孟も一緒に離れる予定で、石堂は新宿御苑に四万五千円の事務所兼用のマンションを借りたせいで苦労して、離婚の直接原因はそこではないかと言われたとか、<足立正生田村孟の仲が悪かった。田村孟中原弓彦と仲が悪いのは実は顔が似ているという生理的問題に理由があって>とか、実にいいかげんなハナシばかり書かれている。ただ、<大島と田村は貧乏としても、小山明子佐々木守戸浦六宏小松方正渡辺文雄の同人の年間所得は九千万円。ひとつの映画会社の一カ月分の収入に当たるわけだ。これじゃ、どうにも独立プロとは言えんかった。それは大島暎子も嘆いていたが俳優たちはかなり、お金に関してはドケチだったらしい。自分たちは大島の映画に五万円で奉仕しているのだから、それ以上の大島への奉仕はする必要はないという風だった。><中島正幸などは、てっきり同人のつもりでいたが、篠田正浩の映画のプロデュースを手伝ったというだけで、創造社からハジき出されてしまった。>など、信憑性にかなり問題はあるが、そういう一面もありはしたろうとは思う。