『あんにょん由美香』パンフレット/『あんにょん由美香』コメント


 いよいよ今日からポレポレ東中野で上映が始まった松江哲明監督の新作『あんにょん由美香』。
 この作品のパンフレットに作品評を書かせていただいています。
 それからチラシの方にもコメントを書かせていただいています(http://www.spopro.net/annyong_yumika/)。


 松江監督の新作が公開されると、自分は初日に劇場の前まで行くことが多い。パンフレットを買うためだ。『セキ☆ララ』の時はパンフと共に松島出版による濃密な『松江哲明読本 裸々裸三昧』が同時発売されたので今は無きシネマアートン下北沢まで走った(→http://d.hatena.ne.jp/molmot/20060603#p2)。そこまでするなら後日観に来る映画自体もその時に観ておけば良いようなものだが、毎回既に観ていることが多く、初めて観る観客を立たせて何度目かの自分が座って観るのは具合が悪いので劇場の受付でそそくさとパンフレットだけ買って帰るのが習慣化している。今回も仕事帰りにポレポレ東中野に寄ると既にトークショーが始まったところで、そこだけ中に入れてもらって聞こうかとも思ったが、何せドアから観客がハミ出るくらい入っていて通路に所狭しと座っている観客を目にして、そのまま帰った。松江監督は公開前の特集上映の時に、大丈夫かなあと不安を口にし、そりゃ大丈夫でしょうこれだけ話題になってるんだからと言っても、はじめに入らないと駄目だからと不安がっていたが、結果は先述の通りだ(松江監督、直井さん、由美香さん、おめでとうございます)。
 『童貞。をプロデュース』のパンフレットは『SPOTTED701』がパンフ代わりになっていたので、松江作品でパンフが発売されるのは『セキ☆ララ』以来となるが、あの時はプレスシートみたいなものだったので、今回の『あんにょん由美香』パンフレットは16ページもあるので、ちゃんとした映画のパンフレットになっている。
 自分はこの作品のプレスシートに作品評を書かせてもらったものの、パンフレットには何も言われてなかったので載ってないと思っていたら掲載されていたので買って帰ってから驚いた。というわけで松江作品のパンフレットに書かせてもらえて感無量でありますが、東良美季さんの作品評や、松江さんと柳下さんの対談が読み応があるので、モルモット吉田が書いてるだけじゃ買わねーという方も上記のお二人の書かれたり喋られているものが素晴らしいのでぜひご購入を。500円です。内容は下記の通り。

あんにょん由美香』パンフレット


P1 あんにょん由美香によせて  野平俊水(北海商科大学教授/『あんにょん由美香』出演)
p2 映画というものすべて  東良美季(AVライター)
p4 SPECIAL TALK 柳下殼一郎(単行本『女優 林由美香』監修・『あんにょん由美香』出演』)」×松江哲明(『あんにょん由美香』監督) 
p9 あんにょん由美香』KEYWORD STAFF&CAST PROFILE  作品解説:田野辺尚人(別冊映画秘宝/DEVILPRESS編集人)
p12松江哲明」にしか撮れない離れ業。 モルモット吉田(映画ライター)


2009年7月11日発行 発行:『あんにょん由美香』フィルムパートナーズ
編集:直井卓俊(SPOTTED PRODUCTIONS)/編集協力:井佐みずほ/デザイン:戸塚泰雄(nu)
SPECIAL THANKS:松江哲明青木由香里(ビーモ)、波形亜希(V&Rプロダクツ)、森田一人(インターフィルム)

 ところで、、『あんにょん由美香』サントラ、パンフレット、『SPOTTED701』のいずれか2点以上購入すると劇場限定で特典が貰える。詳しくは『あんにょん由美香』公式ブログ参照。自分はその特典が欲しくてたまらなかったので運良くサントラの購入がまだだったので、パンフレットと共にサントラを購入して特典のあるブツを頂いて喜んだ。
 この『あんにょん由美香 オリジナル・サウンド・トラック』に収録されている曲の素晴らしさについては言うまでもないが、ライナーノートを次回松江監督作主演の前野健太さんが書かれていてこれも良いのだ。何度も読み返した。

『あんにょん由美香』オリジナル・サウンド・トラック[SPR001]

『あんにょん由美香』オリジナル・サウンド・トラック[SPR001]


 さて、ここから先は『あんにょん由美香』は観客ひとりひとりのものになる。自分はとても面白かったが、真っ向から批判する声も出るべきだと思う。それほどこの作品は単なる傑作ではないのだ。林由美香に思い入れがあるから、またはないから面白いとかつまらないではなく、観客ひとりひとりによって異なった思いを抱くだけの幅を持った作品になっている。ぜひ観て自分がこの作品をどう思ったか、何が面白かったか、または何がつまらなかったのかを言葉にして探していただきたいと思う。
 そういえばプロを自称するどこかの馬鹿が嫉妬のあまり冷静に作品を観れなくて作品と無関係なことを得々と書いて方々から馬鹿にされていたが、入場料を払って作品と向き会う観客の方々ならそんな心配はないと思うのでぜひ、ご自身がどう受け止めたかを言葉にしていただきたいと思います。
 松江作品に毎度言われがちな「これはドキュメンタリーじゃない!」(『あんにょんキムチ』の頃から言われているのだから年季が入っている)と、この作品を観て思われた方がもしいれば、では自身の定義されるドキュメンタリーがどういうもので、自身が正しいドキュメンタリーと思われている作品が果たしてその定義に当てはめてみて本当に疑いようがないか、考えてみるのも面白いと思います。『あんにょん由美香』はドキュメンタリー、フェイクドキュメント、劇映画という厳密な選別が果たして意味があるのかという問いかけをも観客に投げかけてくるドキュメンタリーから劇映画を凌駕していく快作になっていると思います。