書籍

1)「遊撃の美学 映画監督 中島貞夫ワイズ出版 

遊撃の美学―映画監督中島貞夫

 新文芸坐に「中島貞夫緊急アンコールナイト」の整理番号付き前売り券を購入するために立ち寄った際、入荷していたので購入。「昭和の劇 映画脚本家 笠原和夫」「映画監督 深作欣二」に続く書として相応しい。今後中島貞夫の作品鑑賞の最上の手引きとなるだろう。
 それにしても今回の緊急オールナイトで「にっぽん’69 セックス猟奇地帯」と「ポルノの女王 にっぽんSEX旅行」が追加上映されるのは嬉しい。先日の上映を逃して悔やむに悔やみきれなかっただけに尚更だ。「驚異のドキュメント 日本浴場物語」「セックスドキュメント 性倒錯の世界」」「セックスドキュメント エロスの女王」も是非観たい。
 「遊撃の美学 映画監督 中島貞夫」の方は気になる記述に溢れているので、じっくり読みたいと思っているが、その中から、「893愚連隊」の読み方について、世間的には「やくざ愚連隊」であり、ビデオのパッケージにも、そうルビがふってある。しかし、中島貞夫は先日のトークショーでもそうだったが本書においても「はち・きゅう・さん愚連隊」と自分は呼んでいると。又、97年末、京都映画祭事務局、東映とそれぞれトラブルを抱えた中島貞夫が右近にマッサージへ行くと、 深作欣二が居合わせ、二人でビールを飲みながら「無茶苦茶やで、東映は。潰れるな」と喋り宿に帰って寝ようとすると電話が鳴り、三船敏郎の死去を知らされたというエピソードは極めて印象深い。70年代の東映京都を主に鮮烈な作品を連打した二人が揃って東映は潰れると呟く不気味さ。そしてそれに続く三船の死。実際にはこの後、深作は東映京都で「おもちゃ」を撮り、東映東京で「バトルロワイアル」を撮り、晩年の最後の2作を古巣で撮り終えることができたわけだが、では中島貞夫は?引退映画をラストに1本撮ると語っていたが、今こそ「893愚連隊」の続編や、「鉄砲玉の美学」「狂った野獣」の様な作品を撮って欲しいと思う。