俳優 渡辺文雄死去

molmot2004-08-04

 
 創造社同人も、大島渚脳梗塞に倒れ未だ再起叶わぬ中、戸浦六宏小松方正に続いて渡辺文雄も還らぬ人となり、同人ではないが客分、佐藤慶を残すのみとなった。
 渡辺文雄と言えば、やはり大島渚の作品での印象が鮮烈である。「愛と希望の街」のブルジョア家族の兄、「青春残酷物語」の医師、「太陽の墓場」の在日朝鮮人、「日本の夜と霧」の新聞記者、「悦楽」は1カット出演なので印象は弱いが、「白昼の通り魔」の刑事、「忍者武芸帳」の織田信長、「絞死刑」の教育部長、「帰ってきたヨッパライ」の毒虫、「新宿泥棒日記」の自らを晒したインタビュアー、「少年」の父親、「儀式」の桜田進に到る諸作で演じた渡辺文雄の姿は、今尚鮮烈だ。殊に「絞死刑」と「少年」が代表と言って良いだろう。「少年」で役者としても燃焼しきった感があり、「儀式」には一応出ていたものの、やはり「少年」が渡辺文雄の最高にして早すぎるピークに達した感がある。実際創造社解散後の大島作品では、「愛のコリーダ」には小松方正が出ているし、主役には佐藤慶が検討されたこともあった。「愛の亡霊」には佐藤慶、「戦場のメリークリスマス」には戸浦六宏、「御法度」にはナレーションで佐藤慶が起用されているが、渡辺文雄の姿を見ることはなかった。渡辺を起用しない理由は「大島渚1968」でも明解な回答が記されているが、「御法度」で、あの4人が宴を囲むシークエンスが在って欲しかったという思いもある。(戸浦六宏の死去は「御法度」製作以前ではあるが)小山明子のコメントが哀しみを増幅させる。