映画の噂

1)角川春樹が新作映画製作発表

 角川春樹の言動をコマメにチェックする自称ハルキストとしては、とにかく嬉しい。製作規模が、である。何せ1997年に角川春樹が公判中に監督した「時をかける少女」の惨憺たる出来栄えと客の数を劇場で見ているので、出所直後から映画製作を再開するだの「男たちの大和」を映画化するだの言ってはいたが、奥山Jrや仙頭同様追われた者の末路は、イメージフォーラム岩波ホールにコヤを開けてもらって、ひっそり上映するしかないのではないかと思い込んでいたのだが、流石角川春樹である。
 東映と提携で製作費が20億とも30億とも言われているが、角川春樹が15億出資するとかで。メジャーでかける大作を製作するのは角川らしくて大いにケッコーだが、角川書店時代と宣伝を含めて大きく立場が異なるので果たして成功するかどうか。
 しかし、やはり東映だったかという思いである。東宝は新生角川映画と太いパイプを持っているし、松竹はフリーブロッキングである。宗教団体のプロパガンダだろうが中学生が殺し合う映画だろうが、毎年ラインナップが揃わずに苦労している東映ならば15億出す人間がいれば直ぐに乗るだろう。
 しかし、旧角川映画の恩恵を邦画三社は受けている筈で、実際、現在の「人間の証明」の例を出すまでもなく、来年には新生角川は「新戦国自衛隊」を出してくるのだから、角川春樹はもっと評価されるべき部分もあると思うのだが。
 今回、驚いたのが、監督が佐藤純弥であるということで、往年の「人間の証明」「野性の証明」を手掛けたヒトではあるし、「新幹線大爆破」という秀作があるので、疎かにしてはイケナイ人ではあるのだが、とは言え前作は「北京原人 Who Are You?」である。その他大味な底抜け超大作と言えば佐藤純弥なので、既に映画の完成度がかなり正確に捕捉できるのだが。
 それにしても何故角川春樹は自ら監督しなかったのだろう?現在脚本もできていないというから、撮影が始まる頃には角川春樹監督作品になっている可能性も高いが、完成度を高める為に佐藤純弥を起用したなら、自分で監督しても五十歩百歩という気がするが…大和ならば旧角川関連者でも市川崑が映画化を果たせずに結局TVでやっていたし、戦争映画という枠組みでなら、澤井信一郎も十年前に東宝笠原和夫の脚本で「真珠湾」をやろうとして頓挫させている。今回の佐藤の起用が東映との関係なら同じく東映東京出身の澤井でも良かった筈で、澤井が監督した方が遙に秀作になる可能性は高いと思うのだが。
 今後の進展に期待したい。

2)鈴木清順新作クランクアップ

 「オペレッタ狸御殿」が無事撮影終了した様で、期待が高まる。肝心の脚本が誰なのか、気になるところである。

3)フィルムセンター高峰秀子特集上映

 話題の「明日を創る人々」他レア作品が並ぶ。9月は吉田喜重が詰まっているし、渋谷実前田陽一、乱歩映画等目白押しなのでここに高峰秀子が入ってくるとなると、とても対処できない。一月丸々フリーでないととても無理だ。高峰秀子はとりあえず「明日を創る人々」(黒澤の恋人デコが出た唯一の黒澤映画である)を筆頭に置くとして、日本映画専門チャンネル等で見られそうな作品は除外して、ビデオ化されていない松竹作品を主にしようかと。「カルメン故郷に帰る」がモノクロ版なら必見である。