映画 「地球で最後のふたり 」

molmot2004-09-10

1)「地球で最後のふたり 」
   〔LAST LIFE IN THE UNIVERSE〕
          (シネアミューズ) ☆☆★ 

2003年 タイ・日・オランダ・仏・シンガポール  カラー ビスタ 107分
監督/ペンエーグ・ラッタナルアーン 出演/浅野忠信 シニター・ブンヤサック ライラ・プンヤサック 松重豊

 最終日に慌てて駆けつけたが、かなりの凡作である。
 死にたがる浅野と、図書館で気を引かれた日本人相手の援交をしている少女が事故死したことから少女の姉と知り合い、静謐にふたりの関係が描かれるのだが、その中に「殺し屋1」が好きらしい(実際に意味もなくポスターが図書館での奥への移動ついでに大映しになる)監督の趣向なのか、松重豊竹内力田中要次、そして「殺し屋1」の脚本家にして「キルビルVOL.1」のチャーリーブラウン=佐藤佐吉、そして三池崇史までが動員されて、陳腐なVシネめいたエピソードが挿入されるのだが、その違和感が異物として生のまま提出されているので、敢えて異物を混入したことによる映画的躍動やリズムの変化が起こる訳ではなく、まったくの放置にしか見えないのだが。それでも最悪の事態を回避できたのは、クリストファー・ドイルの撮影と、浅野、シニターに負うところが大きい。
 開巻間もなくの、本に囲まれた浅野の部屋へ兄が訪ねてきたシークエンスで、ソファに座る兄を、カメラはローアングルで足元を捉える。一度下手にフレームアウトした兄が間髪を入れずにポンとソファに飛び移るショットや、シニターの家のリヴィングに掛かっているピンクのカーテンの鮮やかさは素晴らしい。
 後半の浅野とシニターがふたりきりになることで、濃密な空間が生まれてきていたが、ラストに至り、やはりVシネ的展開と、つまらない大阪が描かれて興醒めだった。
 死にたがるも、何故か周囲が死んでいくという浅野は、面白くできる設定だけに、それが生かされていないのは残念だし、大体開巻から、決して聴き取り易いとは言い難い浅野のボソボソした喋りで自主映画みたいな青い内容のモノローグを聞かされた段階でいかんと思ったが、結果は少し捻った日本とタイの文化交流用の観光映画である。