書籍 「映画覚書 Vol.1」

1)「映画覚書 Vol.1」阿部和重(文藝春秋)☆☆☆★★ 

映画覚書 Vol.1
 読了。文体がモロ、ハスミなのだが、これはもう本文中に度々ハスミ本からの引用を明かしているし、講義内容がハスミをなぞっていると指摘されてもその通りと言ってしまうヒトだから、問題にはならない。ハスミ御大との長い対談も収載されていることだし。言わば、Beatlesの影響を問われて、純粋に好きだと言って憚らない奥田民生と、もう影響を受けた時期は過ぎたとか「TOMORROW NEVER KNOWS」というマンマな曲を出しておきながら平気で言う方との違いみたいなもので。それにしてもこのレヴェルの批評が、常時キネ旬などに載っていなければいけないのだが、実際は面白いのかどうかはおろか、執筆者が肯定しているのか否定しているのかすら判然としない解説に手を加えた程度のものが横行している。阿部和重は極当然の映画批評を誠実に書いていた。