映画 「父、帰る」

molmot2004-11-15

1)「父、帰る」 (新宿武蔵野館) ☆☆☆

2003年 ロシア カラー ビスタ 111分 
監督/アンドレイ・ズビャギンツェフ  出演/イワン・ドブロヌラヴォフ ウラジーミル・ガーリン コンスタンチン・ラヴロネンコ ナタリヤ・ヴドヴィナ
  
 開巻の「JAWS」の如き水中シーンから、ジャンプ台で怯む主人公、走る兄弟を捉えた横移動…といった要素が反復されて展開する後半、そしてある種の結末。全編、FIXを基調に美しい画作りがなされ、それはヴェネツィアのみならず各国で高評価を得るに相応しい構えのある作品だと感心はするものの、個人的には大嫌いな作品である。
 我儘なマザコンのガキが延々と不貞腐れてる内に、(結末触れるので鑑賞予定の方は御留意)自分のせいで事故が起きてしまって焦ってるだけのハナシではないか。美しいと評判の映像も、絵画的構図主義の弊害に見事に嵌った絵葉書の如き映像でしかなく、そこから映画的躍動もリズムもない。
 「誰も知らない」にしてもそうだが、子供も無知と幼さに依存しきって御都合主義にハナシを持っていく映画が大嫌いで、同じ子供を描いていても「禁じられた遊び」や「ポネット」には、大人の目線からの厳しさと愛情が絶妙に配されていた。
 12年振りに突如帰宅した父親と二人の子供が旅をすることになり、弟の視点から描かれていくわけだが、父親が12年間何をやっていたのか、何故帰ってきたのかは一切明かされず、また父親が何やら掘り出していたものが何であるかも明らかにされないが、それは気にならないし、どうでも良いことだ。
 粗野な父への反発を抱きながら続ける旅で結局描かれているのは、意味も無く拗ねている主人公の不貞腐れた顔があるだけで、観客としては、こんな糞餓鬼のブサイクな顔を1500円も払って観ているのかと思うと馬鹿らしくなり、また画面には品のないこれ見よがしな美しい風景を描いて誤魔化しているので、より腹立たしくなり、親父が怒るのも無理は無いと思えた。クライマックスにしても、要はこの時間に帰っておいでと言ってるのに4時間遅れで戻ってくるんだから、そりゃ餓鬼達が悪く、それを怒られたからとナイフ持って威嚇して塔に登って自殺しようとする馬鹿餓鬼は放っておいて死なせれば良いものをと思ったが、思わぬ逆転で呆然としている餓鬼を見て、それみたことかと思うだけの凡作で、この程度のものが過大評価されてはならない。