古本 「青春」

京王古書市
1)「青春」大島渚

 恒例京王古書市。閉店30分前にざっと見ただけだが、今回は映画書は少ない。とりあえず目に付いた大島の「青春」を購入。
 1970年出版の初版本。1200円也。たまに見かけても状態悪い上に高いので敬遠していたが、許容範囲の汚れなので。
 学生時代から助監督時代を経て監督デビュー迄の語りおろし。ということで当然朝日選書の「体験的戦後映像論」と内容は重複するが、資料としては必要。大船入社後の件で、相当山田洋次の悪口言いたそうだったが、やはり1970年なので名前は出さずに共産党寄りのヒト、と批判。「幸せの黄色いハンカチ」の頃になると堂々と罵倒していたが、未だ遠慮があった頃か。
 
 大島に関連して埒もないことを少し書くと、閉店が迫っていたので早足に棚から棚を駆け巡っていると、ジュネの「泥棒日記」が鮮やかに視界に飛び込んできた。正に大島渚の「新宿泥棒日記」で横尾忠則紀伊国屋内を歩きながら不意に、棚に均一に並べられている数十冊の中から「泥棒日記」が飛び込んでくるのと同様の体験をしたわけだが、これは単に「新宿泥棒日記」の印象が脳裏に残っており、無意識のうちに視覚が「泥棒日記」を捉えただけのハナシで、そんなことはどうでも良く、そこから庵野秀明が「ラブ&ポップ」のレンタルビデオ店内のシークエンスで「シベ-ルの日曜日」を「新宿泥棒日記」同様の使い方で視界に飛び込んでくるという表現を用いていたことを思い返し、庵野大島渚の作品を観ていないと言いながら多くの作品でパクリにしか見えないシークエンスが頻出するのは何故か、と思わせられた。「キューティーハニー」も、大島と共に創造社の同人を務めた佐々木守の存在を考え合わせると無関係とは言えない。まあ「シベ-ルの日曜日」は村上龍の原作にも同様の表現で描かれたおり、庵野はそれをうまく映像化したということなのだが。嘗て「ユリイカ」誌上で大島×庵野対談というのがあったが、間に実相寺昭雄佐々木守薩川昭夫を挟むことで、この二つは限りなく接近する。エヴァが流行った頃、散々類似が指摘されたが、以降の作品でこそ類似関係がある。