書籍 「おすぎです。映画を観ない女はバカになる」

1)「おすぎです。映画を観ない女はバカになる」おすぎ (主婦と生活社)

おすぎです。映画を観ない女はバカになる!
タイトルで自己紹介している凄い本だが、雑誌連載から300本程を選んで掲載。おすぎこと杉浦孝昭の映画本は、「シネマディクトを撃て!」「おすぎの私家版映画年鑑〈1989‐1991〉」淀川長治との共著「おしゃべりな映画館(1)〜(4)」等を読んでいることもあり、渋々購入。
 基本的にライブでの喋りでこそ立つヒトなので、文筆方面ではおすぎの魅力は薄く、「シネマディクトを撃て!」が評論本として出色という程度だ。とは言え映画と本格的に付き合おうと決めた中学生頃に「おすぎの私家版映画年鑑〈1989‐1991〉」「おしゃべりな映画館」から受けた影響は大きい。
 とは言え、近年のおすぎ、具体的に言えば淀川長治亡き後の1998年以降のおすぎには全く魅力を感じない。自分を勝手に淀川長治の後継者と勘違いしたのか、何でもベタ褒めになってしまい、週間文春の星取表でも常時星3つがつくようになってしまった。又CMで何でもかでも絶賛するので信用を失くした。
 配給会社との関係上、駄作でも無理矢理褒めるという傾向が、雑誌媒体は昔からのこととしても、個人サイトですら出てきている。嘘で固めた絶賛記事を書いた本人は試写で無料で見ているから損害はないが、それを読んで信用して観た側は馬鹿を見る。結果、その人間の書くもの一切を信用しないということになるのだが、おすぎも正にそうで、こう何本も『これを見るために生まれて』こられたのではたまらない。
 本書もその傾向が強く、往年の批判力は弱まっている。おすぎは多種の雑誌に書き散らかしており「アサヒ芸能」で連載していた映画時評など単行本化するに値するのだが。