映画 「またの日の知華」

molmot2005-02-06

20)「またの日の知華」 (シネマスクエアとうきゅう) ☆☆☆★

2004年 日本 疾走プロダクション カラー ビスタ 114分 
監督/原一男    脚本/小林佐智子   出演/吉本多香美 渡辺真起子 金久美子 桃井かおり 田中実


 原一男が劇映画をやると知ったのは、96年の頭に出た映芸の座談会だったか。既に本作のプロットはできており、脚本作業に入っていた。撮影を自分でやるか他人にやらせるかを考えているといった内容だった。「全身小説家」が1994年だから、劇映画なら早々に観ることができるだろうと安心していたが、結果としてはいつもの、というよりもそれ以上の年月がかかってしまった。
 シネヌーヴォが支持してきたせいもあり、本作の進行状況はクランクインした1999年以降、中断、再開を割合身近に知ることができた。
 完成からでも丸一年寝かされた上での公開となった「またの日の知華」は原一男の初劇映画としては突出した作品ではないが、悪くない。
 4人の女優に一人の女性を演じさせるという方法論で制作された本作だが、その方法論に縛られ過ぎた嫌いがある。4人(実質5人)によって各世代の知華が存在するわけだが、観客は当然ある地点をもって演者が変わったことがわかるのだが、変わった地点が明解すぎる。それぞれの世代が終わる毎に章立ての表示が出るのだが、あんなものはいらないし、夫々の世代で介してくる男が変わるのだが、彼らが見た知華と観客が目にしている知華が変わっても一向に構わないわけで、「ハウルの動く城」の様に、カットによって若かったり、年老いたりしていた方が良かった。それをしなかったのは、初めて劇映画を監督する上で、混乱して収集がつかなくなることを恐れた結果だとは思うが、本作を観る限り、原一男ならそれくらいのことをしても十分やれたと思う。
 日本映画に多い地方の風習行事を敢えて挟む−「沙羅双樹」や「ヴァイヴレータ」にあるような手法が大嫌いなので、本作では2度も出てきて不愉快だった。あんなものは尺稼ぎと情景に流されているだけだ。
 小谷嘉一の演技があんまりだとかあるのだが、この作品は全体のバランスは決して良くは無いが、幾つもの無視し難い箇所がある。(続く)