イベント 「西島大介『世界の終わりの魔法使い』(河出書房新社) 刊行記念 西島大介+庵野秀明トークショウ「世界の終わりのファンタジー」

molmot2005-03-23

4)「西島大介『世界の終わりの魔法使い』(河出書房新社) 刊行記念   西島大介+庵野秀明トークショウ「世界の終わりのファンタジー」 (青山ブックセンター本店内・カルチャーサロン青山 )

 西島大介と言っても「凹村戦争」を読んだぐらいのもので、その他サブカル誌で見かけるのを漫然と眺めるぐらいで、格別の思いは無い。とは言え、庵野秀明とのトークショウがあるというなら、と行って見たら、これがただのオタクが庵野を迎えて自分の思いをとりとめもなく延々と語り、自作アニメを見せるという、なかなか業の深いイベントだった。まあ、パブリシティと連動しない時期に庵野のハナシをたっぷり聞けたので、個人的にそれはそれで良かった。
 個人的に興味を引いた件を幾つか列挙すると、「トップをねらえ!」について、それ以前のOVAは豊潤な予算をかけていたが、「トワイライトQ/迷宮物件 FILE538」が大赤字でOVAにかける製作費が大幅に減り、その上バンダイビジュアルGAINAXより先に押井守に新作を作らせると宣言した為にトップの企画は凍結され、「機動警察パトレイバー 初期OVA」が製作費1250万円で製作され、ヒットした。この予算でもヒットするアニメが製作できると判断された為、トップも同額で製作することになり、これもまたヒットした。これ以上は直接口にはしていなかったが、ある種の「鉄腕アトム」的な問題と言うか、このために以降のOVAの衰退と現場への逼迫を導いたことが伺える。
 とは言え、これは自ら先方の提示額より遥か安価な30分アニメを50万円と提示した手塚眞・ルミ兄妹の父親と違い、たまたま作家性の強い作品を連発してしまったために敬遠されていた押井守が与えられた条件でようやく新作製作の機会を得、ヘッドギアのプロジェクトにうまく合流して娯楽色の強い作品を作り、それがうまくヒットしたというだけのことなのだから、押井守を責めるには至らない。
 押井守についてはエヴァ製作時の仮想敵としてのパトレイバーの存在や、コピーのコピー世代についてのハナシの中で宮崎駿押井守もコピーの劣化によって作品が形成されているという件は興味深かった。
 その他、ジブリ美術館で展示上映されている「空想の機械達の中の破壊の発明」について、世間体から兵器大好きな自己を曝け出せない宮崎駿の代わりに動員されたと語り、一部では知られている例の没になったコンテでは、ラストに巨神兵が登場し、原作に忠実な描写をやる予定だったという。コンテには宮崎の許可は降りたが、翌日にやはり没ということになり、現在作品化されているものになったという。
 富野由悠季ガンダムについても幾つか語られたが、個人的には下世話に「Gガンダム」についてのハナシが面白く、当初今川康宏は三国志的な世界観で考えていたが、バンダイからマーチャンダイズが結局ガンダムしか売れないのだから、ガンダムファイトしろ、といくうことになって、あんなんになってしまったと。
 新海誠に関しては、エヴァの顧客名簿がスライドして一部あちらに行ったという表現で、「ほしのこえ」に関しても肯定気味ではあった。
 「ローレライ」は樋口が監督として作品を完成させたことが素晴らしいと語りつつ、欠点を語れば3時間は語れると言い、結局は亀山千広福井晴敏役所広司妻夫木聡の映画であって、一応監督だから立ててもらっているが、所詮新人監督にすぎない。現にフジのワイドショーですら舞台挨拶に樋口の姿は映さない。あの作品の物足りなさは、資本が増える度に口を出すヒトも増えるから、と至極真っ当な正論だった。
 NISSANのCM出演まで語り、終了。個人的には満足したが、果たして西島のファンはどうだったのか。誰よりも西島は満足しているだろうが。