映画 「エターナル・サンシャイン」

molmot2005-04-28

75)「エターナル・サンシャイン」[Eternal Sunshine of the Spotless Mind ] (渋谷シネパレス) ☆☆☆☆★

2004年 アメリカ カラー ヴィスタ 107分 
監督/ミシェル・ゴンドリー     脚本/チャーリー・カウフマン     出演/ジム・キャリー ケイト・ウィンスレット キルステン・ダンスト マーク・ラファロ イライジャ・ウッド

 本国程評判が良くない上に、身近な評判も良くは無かったので危惧していたが、実際に観てみれば、これ以上ないというぐらい素晴らしい秀作で、完全に魅了された。もう一度みたい。
 開巻のジミュ・キャリーが横たわるベッドをロングで捉えたブルーがかった朝のショットからして、ハッとさせられる映画的瞬間に満ちているのだが、回想に入り、ケイト・ウィンスレットの出会い、そして彼女がジム・キャリーの記憶を消したことがわかり、自身もその辛さから逃れるためにケイト・ウィンスレットの記憶を消す、という展開を時制を入れ替えながら描いてく過程も面白く、単に記憶を消してくれる業者がいるという奇抜さだけでは、とても持たないことは「マルコヴィッチの穴」が証明している。
 じれったくなる出会いから愛情を深めていく描写を、時制を入れ替えることで大幅に短縮し、描写自体を恋愛の断片的記憶として観客に提示することで、観客の断片的恋愛の記憶と融合させてしまうことに成功している。
 何と言っても面白いのが、ジム・キャリーケイト・ウィンスレットの記憶を消されないように、様々な記憶から記憶へとケイト・ウィンスレットを連れて逃げて周る描写で、何でもありの世界に入ってしまうことで、ほとんどの作品は失敗するのだが、本作ではその節度が実に良い。
 この作品が素晴らしいのがラストの展開で、記憶を消すことが必ずしも悪いことではない、という逆説的な展開があることで、こういった題材をここまで斬新に作り出したチャーリー・カウフマンには驚く。またその脚本に映像が主張し過ぎず、かと言って控えめにもならないバランスの良さを示したミシェル・ゴンドリーも素晴らしい。