映画 「肌の隙間」

89)肌の隙間 (ユーロスペース) ☆☆☆★

2004年 日本 国映/新東宝/Vシアター135/インターフィルム  カラー ヴィスタ 77分 
監督/瀬々敬久     脚本/佐藤有記     出演/不二子 小谷健仁 伊藤洋三郎 飯島大介 吉村実子
肌の隙間 [DVD]
 映画のプログラムなどというもの程鬱陶しいものはない。あんなペラペラのものに600円〜700円取られるのだから。ならば買わなければ良い、今ならHPで十分その機能性を継承している。それは確かにそうなのだが、生まれて初めて劇場で観た作品である「のび太の海底鬼岩城」で、幼児ながら自分の意思でプログラムを買ってしまったことが不味かったのだと今にして思う。これは映画を観れば買うものなのだと思い込んでしまったわけである。だから、出来不出来に係わらず、観にいったものは全て買うというその後の人生に暗い影を落とす映画プログラム人生が始まってしまったのである。拍車がかかったのは、映画好きの伯母からチャップリンヒッチコック、我が生涯のベスト1作品「タワーリング・インフェルノ」など数十冊のプログラムを中学に入った折に貰ったことも関係している。とは言え、何回かの止める機会はあった。最も象徴的だったのが高校1年の頃だったか、ミニシアター系列の作品を観る様になってabシネマで「風の丘を越えて 西便制」を観た時だったかにそれは起こった。映画は凄く良かった。で、帰り際に例によってプログラムを買おうとしたら、千円なのである。高校生だったのでこれは怯んだ。この時止めておけば、以降もう少し小銭が余ったのではないかと思うが、『買わねばならない』と買ってしまった。これで止める一度目の機会は失した。次の機会は大学の頃、年間150本以上観るようになってくると、流石にプログラム代が嵩む。それもミニシアター系列は700円なら安い方で、千円とか平気で言ってくる。それも良い作品なら抵抗はないが、見終わってゴミとしか思えない作品のプログラムに千円以上払う時の痛みは、相当応えた。しかし、長年の習慣とは恐ろしいもので、結局止めずに来てしまった。この時期、「四月物語」や「カリスマ」が箱入りプログラムというのを出してきて、ゴジラシリーズの如くマニア向けに高いプログラムと一般向けに通常料金のプログラムを出してくれたなら良かったのだが、二千円もする箱入りプログラムしか売っていないのだから仕方ない。そう、全て仕方ないのである。
 ただし、プログラムに執着しているようで自分では、そうも思っていない。売り切れていればそれで諦める。「カルラの歌」や「ロザンヌのために」など買い逃した記憶がある。それでもまあ、その後たまたま書店などで見かけたら買っても良いという程度だ。「白い肌の異常な夜」のプログラムを10万円で買ったなどと聞いても全く理解できない。そんな金があるならDVD買えば済むことだし、その金でもっと多くの作品を観た方が良いと思ってしまう。ポスターも同様である。自分が積極的に探したプログラムは一連の金田一シリーズぐらいで、一応ATGの「本陣殺人事件」から市川崑版の「八つ墓村」まではプログラムもポスターもほぼ集めたが、これとて全て500円〜1000円内で購入した。だから大島渚のATGのプログラムも欲しいが、高いので買いたくない。案外安いのは吉田喜重だったりする。
 と、自身のプログラム遍歴を記したのは、「肌の隙間」のプログラムのことを書きたいと思ったからである。事前に耳にしていた通り足立正生松江哲明という、赤軍キムチな偏愛する監督二人が寄稿しているのが嬉しい。殊に足立正生瀬々敬久と言えば、若松孝二によると、例の足立収監中に獄中監督させる計画で、実際に監督する候補として瀬々敬久を挙げていたので、瀬々敬久足立正生がどう観ているか伺えて興味深かった。実際自分の希望としては足立脚本による瀬々監督作品、または足立・井土紀州共同脚本による瀬々監督作品というのを是非観たいと思っている。
 このプログラムを手にとってパラパラめくって直ぐ気付くのは、実にATGっぽいプログラムの作りなのである。版型は僅かにこちらが大きいが、モノトーンの表紙といい、本文のレイアウト、ケツに脚本とか、それっぽい。だからそれは本プログラムが濃厚な充実したプログラムであることを示しているのだが、近年でも出色のプログラムだと思う。先日観たゴミ映画「ヘアスタイル」も同じく800円のプログラムだったが、映画同様こんなものに800円も盗るのかというものだった。
 良いプログラムだなと思えるものに出会う率は年々減っているが、久々に値段に釣り合うものだった。