映画 「男痕 −THE MAN−」

『夢の中へ』公開記念“映像詩人 園子温”特集
92)男痕 −THE MAN− (テアトル新宿) ☆★★

1998年 日本 アンカーズプロダクション  カラー ヴィスタ 60分 
監督/園子温     脚本/園子温     出演/伊藤猛 黒岩研嗣 掘祐輔 石川雄也
 
 園子温の作品は熱心には観ていない。国辱映画呼ばわりされたと聞いて「壁の中の秘事」みたいなものかと喜び勇んで観た「部屋 THE ROOM」の印象が強烈だった。以降、ピンク映画で商業映画に進出、などと記事を読んだ記憶がある程度だ。「うつしみ」以降は、随分と作品を連打している印象があるが、観ているのは「うつしみ」と「自殺サークル」ぐらいだ。もっとも公開間近の「夢の中へ」以外にも、「紀子の食卓」「HAZARD」「奇妙なサーカス」と公開待機作の多さに驚くが、日本映画100本公開決まらず状態というのも頷ける。
 熱心に園子温の作品を追いかけているわけではないが、2本だけ撮ったピンク映画は観たいと思っていた。「夢の中へ」の公開に合わせて特集上映が組まれるが、目を引くのがソフト化されていないピンク映画二本が入っていることで、これは観なければならない。
 「性戯の達人 女体壺さぐり」は聞いたことがあったが、今回上映された「男痕 −THE MAN−」は全く知らなかった。こーゆー作品がポンと出てくるところがピンク映画の面白いところだが、本作は、タイトルを見ればわかるように、ホモ映画である。テアトル新宿の安全な環境で園子温のレア作品を観ることができて良かったと思うが、作品としては、部分部分が随分と面白かった。
 開巻のゲーム卓が下に開くのが2回繰り返されるのと、最後のロボットの玩具の胸の部分が外に開かれるのが繰り返捉えられるのは、雨の中の信号等と同じ様に呼応しているのだろうが、そこに意味を求めようという気持ちにはなれない。
 廃墟でのボーリングや、花に囲まれた草原、雨の車で停車中にバイクが横付けされて、車の窓をノックして開いた窓から封筒をねじ入れるシーン、浴室のカーテンを用いた恐ろしく艶やかなシーン等が良い。
 ま、作品としては「3-4X10月」なのだが、園子温の映画にしているだけかと思いきや、ハードな性交シーンもあり、何もこんなに生真面目に掘るシーンをやらなくてもと言う位、生真面目に捉えていた。個人的には廃墟での3人でバックから挿入しているシーンの奇妙さが笑えた。
 とは言え、それ以上の魅力は感じなかった。