「17歳の風景 少年は何を見たのか」公開記念 若松孝二レトロスペクティブ2005 

 若松孝二の新作「17歳の風景 少年は何を見たのか」公開に際しては何らかの特集上映が組まれるであろうとは予想していたが、ポレポレ東中野では公開を記念して大掛かりなレトロスペクティブが開催されるので嬉しい。
 
 上映作品は 「赤い犯行」「鉛の墓標」「乾いた肌」「情事の履歴書」「壁の中の秘事」「血は太陽よりも赤い」「胎児が密猟する時」「犯された白衣」「性の放浪」「通り魔の告白 現代性犯罪暗黒篇」「狂走情死考」「処女ゲバゲバ」「ゆけゆけ二度目の処女」「現代好色伝 テロルの季節」「理由なき暴行 現代性犯罪絶叫篇」「新宿マッド」「性賊 セックスジャック」「性輪廻 死にたい女」「天使の恍惚」「水のないプール」「エンドレス・ワルツ」「毛の生えた拳銃」「女学生ゲリラ」「赤軍−PFLP 世界戦争宣言」「略称・連続射殺魔」の25本で、これらの中でも上映される機会のない、またはソフト化されていない作品がかなりあり、それらは長年観たかった作品ばかりだ。
 以下自分が未見且つ観る機会がなく、今回の上映で見逃せない作品を記すと、PLANETではネットオークションで落札したフィルムを上映したと聞いて羨ましかった若松第7作目にして監督デヴュー2年目の作品「赤い犯行」、劇団ひまわりの女子高生を全裸にして露天風呂に入れた為に児童福祉法違反で大騒ぎになった被爆少女を描いた「乾いた肌」、足立正生が初めて助監督として就いた素晴らしいタイトルの「血は太陽よりも赤い」、今村昌平の「人間蒸発」へのアンチテーゼとして同じテーマで作った「性の放浪」、都立大生時代の福間健二が自ら脚本を書き、主演も兼ねた「通り魔の告白 現代性犯罪暗黒篇」、 全く未知の「理由なき暴行 現代性犯罪絶叫篇」、大和屋竺の監督第三作「毛の生えた拳銃」などがあるが、ソフト化されていても無残なトリミングがなされている「鉛の墓標」や「情事の履歴書」は観直さねばならないし、昨年青山ブックセンターで上映された三島割腹直後に楯の会を揶揄した「性輪廻 死にたい女」も上映が酷かったので観なければなるまい。ソフト化される気配がないから何度でも観て記憶に焼きつけたい「赤軍−PFLP 世界戦争宣言」もこれまで二度観にいっているが、やはりもう一度観たい。ただし、不満なのが開催期間の短さと土日に上映される作品の殆どはソフト化され、何度も上映されている有名作ばかりで、上記に記したようなレア作品の上映は平日ばかりであることだ。実際、最も観たい1本である「性の放浪」など2回の上映共に平日の昼間である。実際、観られるかどうか難しい。土日が無理ならせめてそれらの作品が満遍なく最終回に組み込むぐらいしたらどうか。つい先日も新文芸坐でオールナイトをやった有名作ばかり並べているだけでは、一過性の観客しか来ない。ポレポレ東中野に行かなければ、もう観られないぞ、と血相を変えて集う観客も大事にするべきだ。

 新作「17歳の風景 少年は何を見たのか」は昨年東京国際映画祭の関連イベントで上映された際に観て、個人的には「完全なる飼育 赤い殺意」同様大きな不満を抱いたが、それはさておき、このレトロスペクティブには期待したい。何より1998年以来となる、それ以上に足立正生帰還後は初めてとなる、これだけの規模のレトロスペクティブが開催されることを喜びたい。

劇団ひまわりの女子高生を全裸にして露天風呂に入れたのは「乾いた肌」ではなく、「恐るべき遺産」の間違い。謹んでお詫びいたします。