映画 「笑う地球に朝がくる」「サザエさん 七転八起の巻」

発掘された映画たち2005 Cinema: Lost and Found 2005
130)「笑う地球に朝がくる」〔不完全版〕(東京国立近代美術館フィルムセンター) ★★★

1940年 日本 南旺映画 モノクロ スタンダード 42分 
監督/津田不二夫 千葉泰樹     脚本/南せん子     出演/岸井明 東喜代駒 大竹タモツ エデ・カンタ

かなり欠落しているのでハナシが繋がらないが、各芸人の顔見世&芸を見せるだけの映画。新東宝的な作りだが、1940年製作という点のみ目を引く。
 ラストの主役達の逃走には、いくらハナシが繋がらないとは言え、理不尽な展開。

131)「サザエさん 七転八起の巻」〔不完全版〕(東京国立近代美術館フィルムセンター) ☆★

1948年 日本 マキノ映画 モノクロ スタンダード 53分 
監督/荒井良平     脚本/京都伸夫     出演/東屋トン子 木野浩 宮城千賀子 滝沢静子

 
 今回の上映まで、その存在を知らなかった江利チエミの実写サザエに先立つ、1948年製作の実写ファースト・サザエ。
 東屋トン子というヒトは全く知らないし、ちょっと調べてもわからなかったが、名前からして芸人だろうか。それにしても気の毒なくらいブサイクなヒトで、トン子という名前に相応しい。極端なタレ目で、本作の後半で片輪、片輪と皆連発するのだが、「サザエさんの顔が片輪」みたいな科白は流石に無かった。
 しかし、かなりサザエさんのイメージを悪くするぐらいのアクドイ顔で、「ルパン三世」にたまに出てくるニセルパンとか、こんな顔してる。
 実写ファーストは2作製作されており、本作も前後篇で製作されたらしい。その後、当時の映画状況としてはかなり時間の空いた2年後の1950年に「ササエさん のど自慢歌合戦」というのが製作されている。
 観られたことの意義が大きい作品なので、作品の中身については、かなり欠落しているシーンも多いので何も言えない。
 開巻からは、一応原作に準じた4コマをやっていて、有名な代用食のネタとかは、実写セカンドの時代では合わないので、本作で観れて良かった。
 疑問なのは、サザエさんの世界観は、そんなにレビューやらミュージカルの世界観が入りやすいのだろうか。本作もしつこいぐらい泥臭いレビューシーンがあり、それは本作程ではないにしても、江利チエミの実写セカンドでもかなりあるし、更に三谷幸喜が書いた「音楽劇 サザエさん」と言った存在もある。
 雑誌社に務めるといった大枠は原作に準じているので、実写セカンドとも同じネタが被っているが、やはり江利チエミの1作目の「サザエさん」は悪くない佳作だったと思う。
 後半の友人の娘を片輪にしない為の手術費用を捻出するために奔走するサザエさんというのは、原作の乾いた感じが無くなってしまい違和感がある。殊にサザエさんが時給が良いからとヌードモデルになる件は、とんでもない展開で、長谷川町子はどう思ったろうか。
 こういった作品が存在し、又欠落箇所が多いとは言え、観られたことは感謝したい。本作の発掘はプラネット映画資料図書館である。