雑誌 「映画秘宝 11月号」

88)「映画秘宝 11月号」 洋泉社

 石井輝男追悼特集がやはり気合が入っていて、久々に充実していた。
 驚いたのが、伊丹十三フィルモグラフィーにも載っていない幻のアメリカ映画出演作「大津波」が発見されたという報で、遂に観ることができそうだ。もっともこの作品の存在を知ったのは、「Brutus」の幻の映画特集の際で、ミッキー・カーチスも出演していて彼も観たがっているもののフィルムが発見されないとかで、ポスターは見つかったからということで、そのポスターを前にして彼のインタビューが行われていた。この作品の詳細は知らなかったが、今回の報で初めて円谷英二が特撮を手掛けていたことや、早川雪洲ジュディ・オングらが出演‥て、早川雪洲が長生きしたものだから、早川雪洲ジュディ・オング伊丹十三ミッキー・カーチスが並ぶ映画史のパースペクティブが狂うようなキャスティングである。因みにコチラが上映運動を進めているようだ。どーか東京でも上映されますよーに。
 来月から発売が始まる若松BOXの以降のリリース予定もわかった。

若松孝二初期傑作選DVD BOX-1」 新宿マッド/性賊 セックスジャック/天使の恍惚
若松孝二初期傑作選DVD BOX-2」 狂走情死考/処女ゲバゲバ/裸の銃弾
若松孝二初期傑作選DVD BOX-3」 ゆけゆけ二度目の処女/現代好色伝 テロルの季節/性輪廻 死にたい女
若松孝二初期傑作選DVD BOX-4」 壁の中の秘事/胎児が密漁する時/犯された白衣

 ま、大方予想通りで、イメージフォーラムから出ていたビデオとほぼ同じ(「腹貸し女」が外れたジャックスの音楽の問題か?)で、「新宿マッド」のような大陸書房からビデオ化されていたものが入ったのは望ましいし、未ソフト化だった「性輪廻 死にたい女」がDVD化されるのは、昨年の11月だかに青山ブックセンターまで観に行き、先日の若松レトロスペクティブで再見したのは、まさかソフト化されることもあるまいという思いからだっただけに驚いた。しかし、一番の驚きは観たかった「裸の銃弾」が入っていることで、確か以前PLANETかどこかで上映されていて、悔しがった記憶があるだけに、まさか収録されるとは思わなかった。
 今に至るまで上記の作品群がDVD化されていなかったこと自体問題があるが、これは収録して欲しかったという作品が欠けているのは残念なところで、自分がこれまで観た範囲で具体的に挙げれば「血は太陽よりも赤い」「日本暴行暗黒史 異常者の血」「新日本暴行暗黒史 復讐鬼」「通り魔の告白 現代性犯罪暗黒篇」「理由なき暴行 現代性犯罪絶叫篇」といった大傑作級作品が無視されているのは残念だ。是非、4以降も出して欲しい。それにしても、紀伊国屋DVDは高い。
 尚、大和屋竺の作品も上映、DVD化の流れがあるようで、喜ばしい。後は足立正生の全作がDVD化されるのを待つのみ。5年前の足立全作上映で2夜に渡って何故か女の子で満員のシネ・ヌーヴォのオールナイトで観たことを思い出す。彼女達に受けていたのは、やはり「女学生ゲリラ」。