映画 「三つ首塔」

molmot2005-12-02

ミステリ劇場へ、ようこそ。ラピュタ阿佐ヶ谷
231)「三つ首塔」(ラピュタ阿佐ヶ谷) ☆☆☆

1956年 日本 東映東京 モノクロ スタンダード 88分
監督/小林恒夫 小沢茂弘    脚本/比佐芳武      出演/片岡千恵蔵 高千穂ひづる 中原ひとみ 南原伸二 三浦光子 

 金田一耕助については、小学生の頃よりかなり愛着があり、横溝正史の原作もかなり絶版が多かったとは言え、あらかた読み漁った。その原因を作ったのがゴールデン洋画劇場で放送された市川崑の「病院坂の首縊りの家」で、更に1990年は片岡鶴太郎の「獄門島」、役所広司の「女王蜂」、古谷一行の「悪魔の手毬唄」(単発版)が秋に一挙に放送されるという時ならぬ金田一ブームで、自分の中ではかなり盛り上がった。
 映画化された金田一モノに関しては、21本中(「獄門島」は1本と換算)、今回観た「三つ首塔」を含めて15本観ている。ATGで高林陽一が映画化した「本陣殺人事件」以降は勿論だが、それ以前となると何故か突如ビデオ化された「毒蛇島綺談 女王蜂」と、日本映画専門チャンネルで放送された「幽霊男」と「吸血蛾」を観たに過ぎない。片岡千恵蔵のシリーズに関しては、現実問題として上映プリントがあるのが「三本指の男」「獄門島・総集編」「三つ首塔」しかないらしい(「八ツ墓村」何故片仮名になるのか‥等はネガが現存しないという説もある)が、「三本指の男」「獄門島・総集編」を観ていないというのは単なる怠惰に過ぎず、これまでも何度か観る機会はあった。90年代の頭にはWOWOWで放送されたし、近年も東映チャンネル等で放送されている上にフィルムセンンターでも上映されている。これは高倉健の「悪魔の手毬唄」についても同様で、ネガが現存しないなら兎も角、これらの作品を観ていないというのはかなり不味い。何とか次の機会を待ちたいと思う。ま、東映西田敏行の「悪魔が来りて笛を吹く」と共に、「三本指の男」「獄門島・総集編」「三つ首塔」「悪魔の手毬唄」をBOXで出してくれれば良いのだが。
 と言うわけで、初めて観る機会を得た千恵蔵金田一がシリーズ最終作となる「三つ首塔」である。片岡千恵蔵による本シリーズは「三本指の男」「獄門島」「獄門島 解明篇」「八ツ墓村」「悪魔が来りて笛を吹く」「犬神家の謎 悪魔は踊る」「三つ首搭」と6作品製作されており、石坂浩二よりも多い。又、作品の選定からして横溝の代表作を網羅しており、昭和50年代のリヴァイヴァルで取り上げられた作品と殆どが被っている。(「三つ首塔」も豊川悦司の「八つ墓村」がヒットすればシリーズとして予定されいたという)
 遂に待望の千恵蔵金田一を見ることができた喜び(「金田一耕助の冒険」に「三本指の男」の一部が使用されていたので観たことがある程度だ)があるので、あまり作品についてどうこう言う気になれない。原作の「三つ首搭」自体、もう15年以上読み返してないのでアレだが、評価が高い割にはあまり好きな作品ではない。
 駄目だと言い出せば、スーツにピストル持っている千恵蔵金田一やミステリーとして成立していない、脚本、演出が駄目だと言うことになってしまい、それではあんまりなので、あくまでムードを楽しみながら観ていた。何せ昭和31年の製作だから原作の時代設定にかなり近い。最近のドラマの金田一時代考証は論外としても市川崑の一連のシリーズに唯一勝る点は、この時代背景だろう。
 監督が、小林恒夫と小沢茂弘の連名なのがよくわからないが、ま、演出は二流のもので、とやかく言うものではない。
 小沢栄(小沢栄太郎)が既に千恵蔵金田一に登場している点が面白く、又役どころが遺言状を開示する弁護士なので笑ってしまう。どうもコノヒトがやって来て開く遺言状にはロクなことが書いていないようだ。
 とは言え、チャチながらも三つ首塔のロケセットを作り、ちゃんと炎上させているのでクライマックスは見応えがある。
 ブヨブヨの千恵蔵御大の金田一は全く別物と考えるしかないが、多良尾伴内モノの亜流と考えて大目に見れば御大のキャラが立っているし、楽しめる。