深作健太第三作 「スケバン刑事 コードネーム=麻宮サキ」

 能無し映画監督の悪口を延々と言うのが好きだが、その為には、きちんと作品を追ってくれと、深作健太への罵倒を目にする度に思う。「バトル・ロワイアルⅡ」のみで深作健太を悪し様に言うのは下品だ。「同じ月を見ている」を最後まで耐えて観て、いかに酷いかを体感した者が、深作健太を能無し呼ばわりすることを許される。
 とは言え、自分は新人監督は3本までの猶予を見るべきと思っている。現在がそんな悠長な時代ではないと言うヒトも居るが、1本目、2本目で秀作をモノにした監督だらけでは息苦しい。不出来な監督を観客が支えてやる度量も欲しいし、自分はどうも眞っちゃん、キリヤン、健太とボンボンや二代目の作る映画は文句言いつつも、どうも愛着ある視線で見てしまう。自分がそういった出自では全くないにも係わらず。
 深作健太の恵まれた環境も、ま、そこに生まれてくるのも才能の一つと思っているので、何とか生かして才が伸びれば良いと思っているが、例の「エルの乱」も妙なプロデュース能力で金が集まってしまいそうだっただけに、その前にVシネでも何でも良いからもう1、2本アクションものなりヤクザものをやった方が良いと思っていた。「同じ月を見ている」の演出技量で「エルの乱」というのは、せっかくの機会を生かすには早急過ぎると思っていた。それだけに、「スケバン刑事 コードネーム=麻宮サキ」の監督に深作健太が決まったのは喜ばしく、案外合う題材ではないかと思う。ま、深作健太がアクションを得意とする監督であるかどうかは個人的には疑問だが、年の割には老成した趣味趣向の深作健太だけに、こういった泥臭い作品は合うのではないだろうか。
 それにしても松浦亜弥は「青の炎」の良さからして本来もっと人気全盛期に主演映画が作られていて然るべき存在だったので、生かせなかった日本映画界を残念に思う。
 今月中旬クランクイン。今秋公開とのことである。拓ボンの息子が痛めつけられる役どころで出演するのを期待したい。