映画 「恋の片道切符」「ドッグ・デイズ」「インプリント ぼっけえ、きょうてえ」

銀幕の東京〜失われた風景を探して
134)「恋の片道切符」(ラピュタ阿佐ヶ谷) ☆☆☆★

1960年 日本 松竹大船 モノクロ シネスコ 82分 
監督/篠田正浩    脚本/篠田正浩    出演/小坂一也 牧紀子 平尾昌章 鳳八千代 永井達郎

 篠田正浩デビュー作をよくやく観ることができた。大島渚より一期上の篠田正浩にとっては、大島渚吉田喜重、更には田村孟、高橋治が続々と監督デビューする光景をどう捉えていたのだろうか。篠田正浩の不幸は、松竹ヌーヴェルヴァーグと位置づけられてしまったことにあったように思う。本来、プログラムピクチャーの監督として位置すべきヒトが、大島や吉田と並べ語られることが今日に至る再評価の気運に恵まれない状況にも関連するように思う。そのことは、能力のあるヒトだけに誰よりも分かっているらしく、現在に至るまで、後輩の大島への尊敬の念は変わらず、「御法度」撮影前には、大島が監督するためなら自分は助監督でも何でもやると語り、吉田へも同様の視点で接している。
 篠田正浩のデビュー作が歌謡映画だからと言って軽薄に扱うべきではないのは、今村昌平の「西銀座駅前」を例に出すまでもなく撮影所監督としては当然のことだし、篠田は本作の前に城戸から「黄色いさくらんぼ」をやるように言われて流石に辞退している。
 この作品で興味深いのは、山田洋次がチーフ助監督で参加していることで、これは山田が篠田に頼み込んで参加したもので、篠田は後年、松竹ヌーヴェルヴァーグと呼ばれた枠から外れていた大島と同期の山田が、同世代監督達はどういった作品を作ろうとしているのか知りたかったのだろうと回想しているが、本作を観れば、恐らくとても自分の志向と違うとウンザリしたのではないか。
 平尾昌章の「恋の片道切符」を主題歌に据えた作品だが、デビュー作だけあって、そう奇抜なことはしておらず、実直にカットを積み重ねている。
 

135)「ドッグ・デイズ」〔Hundstage/Dog Days〕 (シアター・イメージフォーラム) ☆★★

2001年 オーストリア カラー ビスタ 127分 
監督/ウルリヒ・ザイドル    脚本/ウルリヒ・ザイドル ヴェロニカ・フランツ    出演/マリア・ホーフステッター アルフレート・ムルヴァス エーリヒ・フィンシェス ゲルティ・レーナー フランツィスカ・ヴァイス

136)「インプリント〜ぼっけえ、きょうてえ」〔MPRINT〕 (シアター・イメージフォーラム) ☆☆☆★★

2005年 アメリカ IDT Entertainment, Inc カラー ビスタ 63分 
監督/三池崇史    脚本/天願大介    出演/工藤夕貴 美知枝 根岸季衣 ビリー・ドラゴ