雑誌 「キネマ旬報 8月上旬特別号」

57)「キネマ旬報 8月上旬特別号」 キネマ旬報社

 久々に充実している。
 今号は何と言っても『追悼 今村昌平』が読み応えがある。
 世間では、木下恵介が死んでもあの扱いだったから、現役の今村昌平であっても緊急追悼本が出るわけでもなく、映画女優と言えば、オードリーとモンローしかいないのかと言いたくなるのと同様、クロサワ以外は冷淡なものである。
 その点はやはりキネ旬だけに、関係者インタビューをとり、これでもまだまだ今村昌平の凄さを考えれば不満なのだが、ようやく追悼に値する特集になっている。
 北村和夫北村有起哉のインタビューも欲しかった)、小沢昭一らの証言はもっと長く読みたくなる。長谷川和彦今村昌平についてはこれまでの映芸でかなり長く喋っているので、ここに載っているもの程度では不満だが、映芸で更に語るだろう。それよりも麻生久美子田口トモロヲ今村昌平への思いが感動的だった。
 初めて知ったのは、天願大介が語る「新宿桜幻想」が90年代前半にイン直前に中止になった理由について。古巣の日活80周年記念作品として実現の運びとなっていたのが、「落陽」に変更になったとのこと。どういう過程で素人の伴野朗に大作を任せたのか知らないが、この時「新宿桜幻想」が実現していれば、日本映画史に残る作品になったろうにと思う。「落陽」なんか水野晴郎に初めて山下奉文を演じさせてシベ超の原点になった以外は映画史に何も残らない作品なのに。
 今号は現場ルポが「犬神家の一族」と「幽閉者」ということもあり、久々に読み込んだ。
 それにしても星取評で「日本沈没」が全員三ツ星というのは、貶すなと言われているのか。通常の神経ならこの愚作を全員揃ってそう褒め上れるものとは思えない。
 以前話題にした『日本映画紹介』『外国映画紹介』はネットに以降させる方針とのこと。ネットの情報のいい加減さには困ることが多いので、キネ旬が確実なデータベースを置いてくれていれば安心する。