書籍 「映画『太陽』オフィシャルブック」

8)「映画『太陽』オフィシャルブック」   (太田出版)

映画『太陽』オフィシャルブック
 「太陽」公開に当たって、ソクーロフに心酔するヒトが、それまでソクーロフに見向きもしなかった連中によって、こぞって何かを言われることに憤りを感じるのではないかという単純な想像に実際に当て嵌まるヒトがいるとすれば、この本は正にそういったヒトの憤りの象徴的存在になるのではないか、などと思う。
 オフィシャルブックなどという軽薄なタイトルとは裏腹に、この書は「太陽」から考える天皇、という視点の本なのかとパラパラとめくってみる限り思えなくもない。
 ソクーロフや、映画としての「太陽」については僅かな記載のようだ。
 自分は至って中途半端で、ソクーロフは歯抜け的に観ているだけで、重要作を見落としていたりするので、映画作家としてのソクーロフにも、その系譜としての「太陽」にも興味はあるし、そういった視点のモノこそ読みたいのだが、同時に本書のような節操がないくらい多くの執筆者による「太陽」から観た天皇についての書にも興味はある。なので即購入したが、はっきり言って西部邁やズガ秀実なんぞ、何を言っていようが読みたくもないのだが、全く信用していないこの手の言論系の方より、映画畑の方が遥かに信頼を置いているせいもあり、本書には足立正生森達也、緒形明、松江哲明井土紀州といった信頼を置く方々が対談や、企画書の形で参加しているので興味を持った。因みに土屋豊や何故か古澤健足立正生と共に天皇映画の企画書を書いているが、この二人は特に前者の方々と反対の印象を個人的に非常に強く持っているので、後でじっくり読むつもりだ。
 森達也×緒形明×松江哲明対談が最も興味深いが、個人的には誰か刺されそうな発言してないか淡い期待を持ったが、特になさそう、に思えた。開巻のOLの多用についての指摘は有益。後はビデオ撮影についての言及が読みたかった。
 正しく妙な本だが、この本と、映画としての「太陽」に言及した本が2冊あると良いんだろうなと思う。
 といった雑感を抱いて、読み始めることにする。