映画 「白い肌に狂う牙」「SCHOOL DAYS」「SCHOOL SOUNDS」「錆びた缶空」「五月雨厨房」「悲しいだけ」「Pellet」

「黒沢清の映画術」(新潮社)発刊記念 KIYOSHI KUROSAWA EARLY DAYS (アテネ・フランセ文化センター)

 今日明日と、アテネ黒沢清の初期8mm作品の連続上映となるわけだが、既に初回で立ち見が出る盛況ぶりで、殺気立つアテネを久々に体感する。西島秀俊中原昌也も来ていた模様。今日でこんなんだから明日はどうなることやら気が重い。 


■Aプログラム

182)「白い肌に狂う牙」 (アテネ・フランセ文化センター) ☆☆☆

1977年 日本 小松組 カラー スタンダード 33分
監督/黒沢清    脚本/黒沢清    出演/片山善智 小松弘美 木暮治(万田邦敏

183)「SCHOOL DAYS」 (アテネ・フランセ文化センター) ☆☆☆

1978年 日本 パロディアス・ユニティ カラー スタンダード 33分
監督/黒沢清    脚本/黒沢清    出演/宮城恒夫 森本隆司 蓮實重彦

184)「SCHOOL SOUNDS」 (アテネ・フランセ文化センター) ☆☆☆

1977年 日本 カラー スタンダード 33分
監督/パロディアス・ユニティ(万田邦敏黒沢清、田山秀之)    脚本/    出演/森野真理子 笠原幸一


PFF SPECIAL  (ユーロスペース
185)「錆びた缶空」 (ユーロスペース) ☆☆☆

1979年 日本 狂映舎 カラー スタンダード 59分
監督/松井良彦    脚本/松井良彦    出演/田村三郎 佐野和宏 秋田光彦

 松井良彦の映画だなあ、と思った。変わらない。「追悼のざわめき」を観た時の衝撃を思い出した。
 と言いつつ、松井良彦の作品は「追悼のざわめき」しか観たことがなかったので、これで二本目だ。
 今回は8mmでの上映だった模様。
 開巻から、温泉にヅラを付けたまま入ったことで有名な橋幸夫吉永小百合の『いつでも夢を』が流れる。即座に「追悼のざわめき」の桜田淳子の『わたしの青い鳥』を思い出す。
 ホモの二人と、そのネコの方を狙う男の思いが交錯する。
 松井良彦の作品はいつも紙一重だ。一歩違えば、鼻持ちなら無い、どうだ過激なことをしているだろうという自意識過剰なゴミのような自主映画に堕す危険性を伴う。「追悼のざわめき」を初めて観た際、共に観たヒトは正にそんなことを言っていたが、自分は面白がったり、うんざりしたり、感動した挙句、ある種の幸福な異物感を抱えたまま帰った。そして忘れられない作品になった。単なる過激さを標榜しただけの作品ではない。
 本作も同様で、上板東映(80年代の自主映画の牽引の場ともなった伝説に聞く劇場だが。本作にも登場するので初めて実物を目にする)内での痴漢から外への疾走、殴る蹴るといった暴力の連鎖も凄いが、そこに行く前に、付け狙う男が映画館の前で『あ、また「ぴあ」と違う。もう「ぴあ」なんて買わねえぞ』と呟くことに笑わせられたり、「追悼のざわめき」の小人の姉ちゃんがバスに乗る際に運転手と『これはコビトやない。小人や』と揉める描写の楽しさにも通じる、陰鬱な描写をこれ見よがしにするのではなく、ユーモアと過激さの振幅がとても心地良い。
 薄汚いアパートの汚れた流しにゲロに混じって落としたラーメンを手で取り出し口に近づけたり、終盤のトイレ内でブリーフが血に染まるといった描写には、生々しい薄汚さが漂っていて良い。薄汚さはどんなに作りこんでも所詮作り物に過ぎず、本作の混濁と汚れには、惹かれる。
 前述したように、「追悼のざわめき」で、小人の姉ちゃんが天下茶屋の高校のグランドに侵入して生徒を追い掛け回し、パニック状態になるのを向かいのビルの上からロングの俯瞰で延々と撮り続け、そこの『わたしの青い鳥』が流れるという史上最強の描写の御蔭で、『わたしの青い鳥』を聴くと即座にこのシーンを思い出すように、「錆びた缶空」の御蔭で、『いつでも夢を』を今後聴くと確実にホモの男達を思い出すことになるだろう。あーあ。
 松井良彦の作品をまた観たくなった。来月のシネマヴェーラの特集、《妄執、異形の人々》は未だラインナップが発表されていないが、松井良彦の作品やってくれないものだろうか。

 

186)「五月雨厨房」 (ユーロスペース) ☆☆★★

1993年年 日本 カラー スタンダード 17分
監督/中村義洋    脚本/    出演/

187)「悲しいだけ」 (ユーロスペース) 

1994年 日本 カラー スタンダード 17分
監督/豊島圭介    脚本/    出演/

188)「Pellet」 (ユーロスペース) 

2000年 日本 カラー スタンダード 17分
監督/小林和史    脚本/    出演/