映画 『父親たちの星条旗』 『犬神家の一族』

molmot2006-12-21

299)『父親たちの星条旗』〔Flags of Our Fathers〕  (Tジョイ大泉) ☆☆☆

2006年 アメリカ WB カラー スコープ  分
監督/クリント・イーストウッド    脚本/ウィリアム・ブロイレス,JR. ポール・ハギス    出演/ライアン・フィリップ ジェシー・ブラッドフォード アダム・ビーチ ポール・ウォーカー ジェイミー・ベル


 やはり、父親たちと娘たちが集団ファックする『父親たちの正常位』というAVは作られるんだろうか。
 イーストウッドがこんな凡作を撮るなんて、としか思えなかった。

300)『犬神家の一族』  (Tジョイ大泉) ☆☆☆☆

2006年 日本 「犬神家の一族」製作委員会 カラー ビスタ 135分
監督/市川崑    脚本/市川崑 日高真也 長田紀生    出演/石坂浩二 松嶋菜々子 尾上菊之助 富司純子 松坂慶子 萬田久子 深田恭子 中村敦夫 仲代達矢
http://www.inugamike.com/movie/inugamike-y01.asx:movie=wmv

 『NANA2』を観ようとしたら、時間が合わなかったので、『犬神家の一族』を再見。何せ初見時は尋常の心境ではなかったし、最前列に近い席から見上げていたり、オリジナル版との比較にばかり気をとられて、リメイク版『犬神家の一族』を楽しむ余裕がなかったので、今回は比較なしに、単品で楽しむべく観る。それに、あと2、3回は観に行くとは言え、興行成績を耳にすると、シネコンでは直ぐに小さい劇場に追いやられそうなので、早めに観るに限ると思ったが、それにしても夜10時の回とは言え、10人も居ない客席に驚きつつ、大きなスクリーンに向かってど真ん中に座って堪能する。
 作品への印象は初見時と変わらない。余りにもはっきりと科白を喋らせすぎているとか、追加した科白や描写が悉く邪魔とか、編集のテンポがオリジナル版に比べて良くないとか、そんな観れば誰でも分かることを今更言っても仕方ない。
 こんなことは今に始まったわけではなく、この傾向は、『天河伝説殺人事件』『帰って来た木枯し紋次郎』 『四十七人の刺客』を経て、『八つ墓村』あたりから顕著になり始め、劇映画では『新選組』『どら平太』『かあちゃん』、テレビではその時期の『赤西蛎太』『真実一路』『刑事追う!』『盤嶽の一生』『逃亡』『黒い十人の女』『娘の結婚』『水戸黄門・オープニング』、PV『ちりぬるを』と観ていれば、現在の市川崑の演出傾向、フィルム選択、ライティングの傾向からして、こういう出来になるのは当然で、今になってオリジナル版には及ばないとか、老成を嘆いたところでしょうがない。個人的にそれで良いと思っているかどうかは別だが、驚くことなど何も無い。こんなもんである。市川崑のこの10年は。『犬神家の一族』にのみ思い入れがあって、下手すればその他の金田一シリーズや市川崑の他の作品すら一切観ていないような奴がムキになってオリジナルと比較して怒っているのは、理不尽にしか思えない。フィルムの新製品が出る間隔もどんどん短くなっているのに、同じ35mmを使用しているとは言え、カメラもフィルムも30年前とは異なっているのに、同じ色調、質感が再現できていないと怒る奴もたいがいで、カメラは大林宣彦の『なごり雪』みたいに事故に怯えながら30年前のカメラを使用したら良いとか、コダックの倉庫へ行って30年前の残り尺貰って来て、そんなフィルム使用したせいで色がおかしかったり、撮影時なり現像で事故起こして多額の賠償金を一瀬Pからコダックはせびられながらでも無理矢理やるべきとまで言うなら、そこまで言うならという思いを持たなくはないが。
 実際『どら平太』は、当初モノクロで全篇行く予定だったのがフィルム会社でその前に事故があって多額の賠償が発生したこともあり、膨大にフィルムを回す市川崑の現場ではとても自信がないとのことで、モノクロ案が不可能になり、スポンサーサイドの要望でモノクロ案を変更させられた『幸福』同様、それならばと銀残しで処理された。

 再見しても、やはりタイトルクレジット開けから、池内万作のボートでの珠代拉致までは、付け加えた箇所の無駄さなどが気になるのだが、以降はオリジナル版の再現度合いがより高まり、カット割り、編集のテンポに到るまでが、かなり高い再現度を実現している。これが結果的に面白くなってしまっているという良いんだか悪いんだかわからないような結果になっていて、まあ、傑作をある程度忠実に再現すればそうなるということで、だからやはり興奮するし、クライマックスの高揚感は味わえる。石坂浩二のあの素晴らしい謎解きの説得力ある語りを再び観れるというだけで良い。
 そして、今回オリジナルのあの素晴らしいラストシーンは、再見してもやはり感動する。