『パプリカ』

16)『パプリカ』 (テアトルタイムズスクエア) ☆☆☆★

2006年 日本 カラー ビスタ 90分
監督/今敏    脚本/水上清資 今敏    声の出演/林原めぐみ 江守徹 堀勝之祐 古谷徹 大塚明夫 山寺宏一

 今敏の劇場作品は『MEMORIES 彼女の想い出』の脚本で名前を覚えて以降、竹内義和原作ということで必然的に観た『パーフェクトブルー』から始まる監督作の系譜を一貫して眺めてきたが、『東京ゴッドファーザーズ』が傑作だった。『パーフェクトブルー』を過大に評価する向きもあるが、竹内義和原作だからという以上に最低の作品で、大嫌いだった。
 それだけに、秀作『妄想代理人』を経ての『パプリカ』には、どこか『パーフェクトブルー』の復讐戦の趣があり、現在の今敏の技量でそれをやれば、十分果たし得たものになるだろうという予想通り、何でもアリな世界へと簡単に入れてしまう作劇の欲望空間に満ちた作りながら、作画の質共に、暴走することなく、計算された過剰さに満ちていて好感を持って観ていた。
 又、久々に純然たるプロの声優をメインに配した劇場アニメを観た気分だったが、やはり良い。林原めぐみなので、演技的に過剰さが鼻につくこともあるが、それはもう、最近のタレント総出演の劇場アニメに慣らされてしまっているからで、やはりこういったプロの声優を起用した作品が主流であって、もう一方に俳優を起用したアニメがあったら良いと思う。個人的理想は、脇なり1ポイントリリーフでのタレントなりの起用という、ジブリで言えば『魔女の宅急便』までの作品に観られたキャスティングの在り方が良い。
 夢と妄想の過剰化を経た騒動譚となれば、個人的には押井守の方が好みではあるし、『妄想代理人』のようなテレビシリーズなら兎も角、劇映画の90分という枠組みでやるならば、今敏ならこうなるしかないという気もする。演出の巧みさは感心こそすれ、旦那芸を見せられている感じがした。P・K・ディックから『エターナル・サンシャイン』に到るまで、相当何度も使われているネタなので、殊更に諸手を挙げて面白がれはしなかった。
 アニメなので、同行した友人の感想の方が適確だが(コチラ→http://doghouseblog.com/blog/archives/2007/02/post_623.html)、今敏の新作劇映画と言うのに、もう観たような気がしてなかなか腰が上がらないと、公開後しばらくたってからも話していた。結局、テアトルタイムズスクエアの最終日に慌てて駆け込んだわけだが。『パプリカ』は、シネマート六本木で続映中。
 関係ないけど、北野武の新作が、『パプリカ』+『8 1/2』というのは本当なのか。ウへーという気もしてしまうが。