『パラダイス・ナウ』『ダフト・パンク エレクトロマ』

molmot2007-05-13

115)『パラダイス・ナウ』[paradise now] (UPLINK FACTORY) ☆☆☆★★

2005年 フランス・ドイツ・オランダ・パレスチナ カラー スコープ 90分
監督/ハニ・アブ・アサド    脚本/ハニ・アブ・アサド     出演/カイス・ナシフ アリ・スリマン ルブナ・アザバル アメル・フレヘル ヒアム・アッバス

 
 開巻で猛烈な後悔に襲われた。作品を観に来たことではない。何故、写真美術館で上映時に行っておかなかったのか、ということだ。アップリンクでの上映と何が違うのか。フィルム上映ではないということだ。この作品は、35mmフィルムの空気感とシネスコの画面で観なければ駄目だ。不鮮明なビデオ上映では本作の真の魅力は伝わらない。
 従って、とりあえず初見の断片的感想になるが、それでも作品の魅力は漏れ伝わってくる。
 昨年からの『ミュンヘン』『夜よ、こんにちは』『幽閉者』と続く一連の流れの中で、最も真摯に題材と取り組んだ作品だ。ここに更に来年公開の『実録・連合赤軍』と流れは続くわけだが、『パラダイス・ナウ』を評して、60年代の若松映画を観ているような、と形容されることが多いが、確かにある意味似ている。具体的に言えば、『テロルの季節』『性賊 SEXJACK』『天使の恍惚』辺りを指して言っているのだと思うが、爆弾を腹に巻いて自爆攻撃を行うという行為そのもので言えば、当然即座に『テロルの季節』(脚本は足立正生ではなく小水一夫)の吉沢健の姿を想起する。
 或いは足立脚本で、天誅としてテロを描いた『性賊 SEXJACK』でも“薔薇色の連帯”と称して性愛での連帯からテロを見つめたのと対照的に、『パラダイス・ナウ』では、街を移動し、自爆攻撃を共に行う相似形のもう一人を探す行為によって、重い連帯の表明がなされる。
 物語は、自爆攻撃を行う二人の直前の行動を描いたものだが、時としてユーモラスなのは、あの御馴染みの声明文を読み上げる映像を撮っているシーンに顕著な緊張感の隔たりであったり、当人以外は日常が続いている中での、死を前にした異物感を観客にも体験させる見事な演出だ。
 そして、もし彼らが自爆攻撃に失敗したならば―、その先が奇しくも続編的構造を持つ『幽閉者 テロリスト』で描かれている。この2本は続けて再見したい。

パラダイス・ナウトークイベント 足立正生×浅井隆 (UPLINK FACTORY
116)『ダフト・パンク エレクトロマ』[DAFT PUNK'S ELECTROMA] (シネマライズ) ☆★

2005年 フランス・ドイツ・オランダ・パレスチナ カラー スコープ 90分
監督/トーマ・バンガルテル  ギ=マニュエル(ダフト・パンク)    脚本/ポール・ハーン セドリック・エルヴェ トーマ・バンガルテル&ギ=マニュエル      出演/ピーター・ハートゥ マイケル・ライヒ