『花嫁人形』『白黒姉妹』

ドイツ映画祭2007

 平日の18時15分に有楽町まで出向くのはそう簡単でもなく、ギリギリに到着する算段だったが電車を一本逃した為に『花嫁人形』は頭10分ほど逃す。しかし、驚いたのは前日よりも遥かに客席が埋まっていたことで、『パッション』はまだ観る機会が多いが、『花嫁人形』と『白黒姉妹』はレア作であることは、みんなよく分かってんなと。
 だから、既に上映が始まっているホール内に入っても、空いてる席を探すのが難しかったが、その中でハゲ気味のオッサンが居る所は両隣空いているので割って入ろうと思うが、どうも後方から暗闇の中で見るに、その人は、蓮實重彦ではないかと。いくらなんでも、ルビッチを上映中にハスミ先生の視界を遮って隣に座るのは恐縮至極なので他を探すが、終映後、明るくなってからフトそちらを見ると、ハスミ先生どころか、もっとのっぺりした、装着前の筒井武文がアリのままの姿で居るような、そんなオッサンだったので、あの暗闇で一人気を揉んでいたのは何だったのかと思う。
 
 マナーに五月蝿い人間では全くないが、意味が分からない経験をする時がある。映画館に限らず電車に乗ってた時にもあったが、いきなり隣に座ってたヒトが横向いてコチラに向かって咳をしたり、クシャミをかけてきたりするのだ。被害妄想でアリもしないことを思い込んでいるのかと思ったぐらいだが、その時は一緒に居た連れも、何、今のと言ってたから事実なのだろうが、いやいや、幼少時に外でコンコンする時は手で口を塞ぎなさいと、オカンも保育園の先生も言ってたやろと言いたくなるくらいで、そのうち電車に普通に乗ってるだけで隣の奴から唾吐きかけられる日も近いと踏んでいる。そんなことをするヒトがまた、至極普通のスーツ姿だったりするから驚く。
 今回も、そんな輩が30秒おきに盛大に咳き込んで、手なりタオルで口を抑えることもなく、おまえん家かと言うくらい咳を飛ばしまくっていたのには閉口した。別に、ルビッチだから背を正して観よなどと言う気は更々無く、腹を抱えて笑える爆笑エンターテインメントなのだから、普通に観てりゃ良いし、咳もすることだってあるだろうと。ただ、ちょっと手で口を覆うだけで、殆ど気にならないんじゃないですかと。『シネマの記憶喪失』で中原昌也が、『ラングとムルナウ』の時の、あの物音一つ立てるな的な雰囲気への嫌悪は自分もあるのでそうムキになることなど全くないのだが、横にヒトが居てその顔に向かって何の気兼ねなく咳を撒き散らす光景は異様だった。

151)「花嫁人形」〔Die Puppe〕(有楽町朝日ホール) 不完全鑑賞につき評点なし

1919年 ドイツ モノクロ スタンダード 57分
監督/エルンスト・ルビッチ    脚本/ハンス・クレーリ エルンスト・ルビッチ    出演/オシー・オスヴァルダ ヘルマン・ティミヒ ヴィクトル・ヤンゾン ヤーコプ・ティートケ ゲルハルト・リッターバント

152)「白黒姉妹」〔Kohlhiesels Töchter〕(有楽町朝日ホール) ☆☆☆★★

1920年 ドイツ モノクロ スタンダード 58分
監督/エルンスト・ルビッチ    脚本/ハンス・クレリー エルンスト・ルビッチ    出演/ヤコブティートケ ヘンニ・ポルテ ヘンニ・ポルテン エミール・ヤニングス グスタフ・フォン・ヴァンゲンハイム