『告白というエンターテインメント 村上賢司映像個展』


 村上賢司の全貌は未だ掴めない。個人映画、セルフドキュメンタリー、商業映画など、人はカテゴライズして分かったようなそぶりをしようとするが、そのような分類など真っ平だと言わんばかりに各ジャンルの往復を過剰なまでに繰り返し、毎年作品を量産し続ける。だから、渡辺文樹を描いた『俺の流刑地(略称・俺ルケ)』を撮った後に、『ALLDAYS 二丁目の朝日』が撮られても何の不思議にも思わないし、『ドキュメンタリーは嘘をつく』で、森達也が「後はムラケンやっといて」と投げ捨てるように言おうとも、続きは、村上賢司がやるのだなと納得できてしまう。村上賢司は何でもやってのけるのだという妙な確信が、僅かにしか作品を観ていないにも関わらずできてしまうのは、自分がその僅かに観た作品にあった言い知れぬ心地よさの印象が忘れ難いからだ。個人映画を観る時には、自分は半身引き気味で観ている。ホラ、分かるでしょ、ね?というような馴れ馴れしさを匂わせてきた段階で、甘えるんじゃないと突き飛ばしたい思いに駆られる。しかし、村上賢司にはそのような甘えは微塵も感じられない。噛んで含めるような柔らかい語り口で観ている者を作品世界に招きいれ、心地よい感触に包まれたまま、映像が展開していく。『観音菩薩 -母光-』や、『川口で生きろよ!』を初めて観た時の心地よさは忘れられない。
 しかし、自分は個人映画・商業映画を含めて、村上賢司の作品を歯抜け的に観ているに過ぎず、何より何度も観る機会がありながら逃し続けている『夏に生れる』を観ないままで村上賢司を語れるわけがない。
 今回『告白というエンターテインメント 村上賢司映像個展』と題して、一気に個人製作の作品群が上映される。『夏に生れる』を含めて、村上賢司と向き合う絶好の機会だけに、逃してはならない。
 
 既に2/2(土)から特集上映は始まり、自分は初日に『ななおく』と『観音菩薩・母光』を観た。
 『ななおく』は初見だったが、18歳の村上賢司による高らかな映画への宣言「思い出は映画に変わっていく!」という叫びを感動的に眺め、再見の『観音菩薩・母光』には、閉塞感に包まれた町からの脱出を願う青年の思いが、初見時よりもはっきりと身近に感じることができたのは、舞台となる場所の近くにその後何度も通うことになったからで、東京まで1時間半ほどで着く距離ではあるが、それゆえに多感な時期の青年にとっては、たまらないものがあるだろうなと実感を持って感じた。
 翌3日(日)も行くつもりだったが、雪の為行けなかったが、2/9(土)・2/10(日)・2/11(月・祝)・2/15(金)・2/16(土)・2/17(日)・3/2(日)・3/8(土)と各プログラムを1日2本ペースで上映しているので全プログラムに通うつもりである。3回券を買えば2100円なので、1回700円で観れて得である。
 尚、上映会場は、イメージフォーラムではなく、イメージフォーラムシネマテークなので、入口が正面の入口ではなく、横にある扉から入り、三階に上がるので注意を。
 

プログラム
Aプロプラム
ななおく 1988/8ミリ/10分
観音菩薩・母光 1992/8ミリ/47分


Bプログラム
水心 1994/8ミリ/55分


Cプログラム
原色バイバイ 1995/8ミリ/84分


Dプログラム
月の裏側を走る 1995/8ミリ/35分
俺に冷たい星 1999/8ミリ/24分


Eプログラム
夏に生れる 1998/ビデオ/76分


Fプログラム
地獄便り 2004/ビデオ/15分
集団自殺刑事 2004/ビデオ/15分
川口で生きろよ! 2003/ビデオ/30分


Gプログラム
拝啓・扇千景 2006/8ミリ/20分
俺の流刑地(略称・俺ルケ) 2007/ビデオ/35分
フジカシングルデート 2007/ビデオ/29分


トーク+特別上映
2月15日 19:30〜
村上賢司森達也(映画監督/ドキュメンタリー作家)
特別上映:著名ドキュメンタリストによる、ドキュメンタリーの虚実をえぐるメディア・リテラシー作品
ドキュメンタリーは嘘をつく



2/9  19:30  Dプログラム
2/10  14:00 Eプログラム/16:00 Fプログラム
2/11  14:00 Gプログラム/16:00 Aプログラム 
2/15  18:00 Gプログラム/19:30 トーク
2/16  19:30 Bプログラム
2/17  14:00 Cプログラム/16:00 Dプログラム
3/2   14:00 Eプログラム/16:00 Fプログラム
3/8   19:30 Gプログラム


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