『痴漢電車 感じるイボイボ』(☆☆☆☆)

WE ARE THE PINK SCHOOL! 日本性愛映画史1965-2008
(46)『痴漢電車 感じるイボイボ』
☆☆☆☆ シアター・イメージフォーラム
監督/今岡信治  脚本/いまおかしんじ 星川隆宣   出演/川瀬陽太 水野麻亜子 林由美香 佐野和宏
1996年 日本 カラー 63分

 ピンク映画特有の理由でソフト化できない(曲を差し換えれば可能だろうが)今岡真治監督の傑作を再見。
 今岡作品は、観返せば観返すだけ倍々と言っても良い位に面白くなる。単に自分が初見時によく観てないからだと言ってしまえばそれまでだが、今岡作品に限ってはその傾向が顕著で、唖然とするほど面白くなってしまう。
 本作も久々に再見すると、これまでだって秀作と思っていたが、そんな程度では収まらないほどの大傑作だと今更ながら感嘆した。
 失踪した女を探す男のシンプルな彷徨の物語が、何故こんなにも深い情感に包まれてしまうのか。ゴールデン街の2階の屋根から眺める景色は見たこともない世界を映し出し、幾ら予算があろうとも作り上げることが出来ない空間が広がる。画面のそこかしこに置かれた“赤”の記号が、やがて女を探す川瀬陽太自身も赤く染まり、「あなたは私」「おまえは俺だ」という交錯を見せる。
 終盤、初期今岡作品ではおなじみの“背負う”という行為にこめられた自己同一、そこに「鳥になって」が響く時、心底嗚咽する。