『あんにょん由美香』2010年1月テレビ放送


 月替わりにはCSの映画専門チャンネルの翌月のラインナップ一覧を見るのを楽しみにしている。つまりは12月に入ったら翌1月分の放送予定作が見れるので、来月まで何とか生き延びる為の理由づけ的に、未ソフト化作品や未見の作品の思わぬ放送を探して喜ぶという非常に侘しい楽しみ方をしている。それぐらいのささやかな楽しみを持っておかなければ、こんな糞みたいな世の中やってられない。
 糞と言えば林由美香だが(『由美香』参照)、衛星劇場の1月放送作一覧を見て驚いたのは『あんにょん由美香』がラインナップに入っていたことだ。04(月) 深01:00/13(水) 深01:30 /19(火) 深03:00 にそれぞれ放送されるという。
 松江哲明の劇場作品のテレビ放送が果たしてどの程度されたことがあるのか、正確なところは知らない。劇場公開作に限定すれば、ソフト化自体が『2002年の夏休み』『セキ☆ララ』ぐらいしかされておらず、CS局での放送を目的に製作された『カレーライスの女たち』や日本映画専門チャンネルで放送された『ほんとにいた! 呪いのビデオ刑事』を除けば、『あんにょんキムチ』も『童貞。をプロデュース』もソフト化、テレビ放送もされていない。それゆえに、毎年のようにこれらの作品が再上映されると初めて観るという観客が詰めかけ、毎年入れ替わっていくという事態が起こる。
 現在においては稀有な劇場でしか体感できない作品を量産している監督ではあるが、それを特権化したり、固執している風ではない。実際、『あんにょんキムチ』も『童貞。をプロデュース』もソフト化の打診はあったようだし、ドキュメンタリー映画特有の問題さえなければ今頃はソフト化されてより多くの観客の目に触れていただろうとも思う。おそらく『ライブテープ』もソフト化は難しいのではないかと予想されるが、DVDにできないから作り方を変えるのではなく、映画館で上映することを第一に考えて作る姿勢は支持したい。
 そうは言いつつも一観客としてはテレビ放送なりソフト化を希望するのは、観たいのに観ることができなかった観客と、事故的にこの作品に出会ってしまうであろう視聴者を期待しているからに他ならない。というのは表向きの理由で、実際は自分が手元に置いておきたいからだけだが。『あんにょん由美香』は劇場で三回ほど観ているが間違いなく今年の日本映画を代表する傑作であり、また『ライブテープ』公開中に観ることが出来るのも嬉しい。今のところソフト化の噂を聞かないので、今回の衛星劇場での放送は貴重なものとなるだろう。実際のところ、正月早々自宅のテレビで観れるなんて幸せなことだと思う。

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