映画の噂

若松孝二が復活する。2月3月と続けて新潟で「十七歳の風景」「完全なる飼育 赤い殺意」を撮影し、更に足立正生脚本による浅間山荘事件を山荘内部から描く「榛名山」が準備中。
80年代、90年代とメジャー映画での実績を重ねてきた若松だが、90年代前半の主活動となった松竹、そして若松の支持者だった奥山Jrの失脚と共にシネマジャパネスクで映画化予定だった谷崎潤一郎の「痴人の愛」(永瀬正敏主演)が製作中止となり、以降Vシネマや自主制作「飛ぶは天国、もぐるは地獄」などを、ひっそりと製作したのみで、映画製作の一線からは遠ざかっていた。
しかし、98年の60年代の傑作群のリヴァイヴァル上映、ビデオ化。更に2000年には足立正生の帰還と、若松を巡る状況は再び60年代の熱気を取り戻しつつあり、今年に入り、ようやく胃癌からの復調も見せ新作の相次いでの撮入となった。
メジャー枠での製作ではないが、その代わり60年代のピンク映画で怒涛の作品を連打していた頃を彷彿とさせる作品が続くだけに期待させられる。
「十七歳の風景」は柄本祐主演で、岡山で祖母を殺した少年が自転車で新潟まで逃避行する物語。
「完全なる飼育 赤い殺意」は、完全なる飼育シリーズの最新作。10年間女性を拉致監禁していた男と殺人逃走犯の物語。
榛名山」は浅間山荘事件を山荘内部に限定して描いたもの。足立正生脚本で連合赤軍を描く。
足立正生も新作に着手している模様だし、大島渚が倒れ、篠田正浩が弛緩しきった大作を撮って引退し、吉田喜重がようやく新作を撮った今、若松の新作の連打には期待したい。