映画

1)吸血鬼〔Vampyr〕 (VIDEO) ☆☆☆★★★ 

吸血鬼 [DVD]
1930-31年 フランス・ドイツ モノクロ スタンダード 70分
監督/カール・ドライヤー 出演/ジュリアン・ウェスト モーリス・シュッツ レナ・マンデル


ドライヤーの作品は「裁かるゝジャンヌ」しか観ていないが、この作品は恐怖映画の古典としてのみならず恐怖映画として最高のものだろう。この作品については、もう数回観て各ショットを考察した上で書きたい。



2)ベン・ハー〔Ben-Hur〕 (VIDEO) ☆☆☆☆

ベン・ハー (トールケース) [DVD]
1926年 アメリカ モノクロ スタンダード 141分
監督/フレッド・ニブロ 出演/ラモン・ノヴァロ フランシス・X.ブッシュマン メイ・マカヴォイ


1959年のウィリアム・ワイラー版が有名だがあれは3回目の映画化。1907年の15分程の作品が最初の映画化となるが、これは未見。国内でオフシアターを含めて観る機会があるのかも不明。
そして1926年製作の本作が2度目の映画化となるが、「イントレラス」「十誡」等と並ぶサイレント期を代表する超大作。
50年代のハリウッドの大作歴史モノも十分凄いが、サイレント期はそれ以上の凄さで、この作品でも街や城門、そしてあの競技場など「グラディエータ」が陳腐なCGに頼って精一杯やったところで全く適わない。あの規模の巨大セットと人を使って78年前に映画化してしまうハリウッドの底力の凄さに圧倒されるが、この作品はそれだけではない。ユダヤ人家族の離散とベン・ハーの苦難という物語構造の巧みさ、そして復讐という一貫したテーマが揺ぎ無く主人公を捉えることで、映画のバランスが超大作にありがちな大味に傾くことがない。
大競技場での戦車レースの迫力は、本当にルーカスは「スターウォーズ エピソード1」で本作を参考にしたのかと思わせる。ルーカスに監督としての能力が枯渇していなかったら、このお手本からあんなものにはなりはしないだろう。
ラストがキリストの最後のエピソードが入るので宗教色と辛気臭さが入ってきて、ややテンションが落ちるが、フレッド・ニブロの演出がブレないので、違和感はそう大きくなかった。