1)「定年なし、うつ手なし」小林信彦 ☆☆☆★★★ 

定年なし、打つ手なし
第一部は定年について、第二部は読書、笑いについて。第三部は東京、その他のエッセイ。
 小林信彦のファンとしては、「週間文春」のコラムと「中日新聞」のコラムは追いかけられるが不定期に各誌に書かれたものは追いきれないので、単行本としてはいびつだが、まとまるのは嬉しい。
 殊に1969年に書かれた「テレビにとって〈笑い〉とは何か-ナンセンスの発想」は必読。






2)「映画の天使」宮川一夫 淀川長治 ☆☆☆★★ 

 1989年に京都朝日シネマで行われた宮川一夫淀川長治の対談を撮影し、映画としてまとめた高岡茂の「映画の天使」の書き起こし版。映画の方は未見なので有り難い。とは言え、書き起こしという形で読むと、淀川長治は大したことは言ってないのだが。森卓也の指摘にもあるように、淀川は一人喋りや対談相手がリードできないと、毎度の「私は未だかつて嫌いな人に会ったことがない」的な繰り言しか喋らないので、山田宏一蓮實重彦の様な映画史における知識を有していないと、淀川から有意なハナシは引き出せない。
 と、言いつつも映画版で観れば本作などもかなり魅力的に映るだろう。淀川の本質は語り手だからだ。