映画

1)「コールドマウンテン」〔Cold Mountain〕(Tジョイ大泉) ☆☆☆★★ 

2003年 アメリカ   カラー  シネスコ 155分
監督/アンソニー・ミンゲラ  出演/ニコール・キッドマン ジュード・ロウ レニー・ゼルウィガー ドナルド・サザーランド

2)「死に花」(Tジョイ大泉) ☆☆★★★ 

2004年 日本 東映 カラー ビスタ 120分
監督/ 犬童一心 出演/山崎努 青島幸男 谷啓 宇津井健

3)「トロイ」〔TROY〕(Tジョイ大泉) ☆☆☆★★ 

2004年 アメリカ WB  カラー  シネスコ 163分
監督/ウォルフガング・ペーターゼン 出演/ブラッド・ピット エリック・バナ オーランド・ブルーム ダイアン・クルーガー

 
 スペクタクル史劇が好きなので、「グラディエーター」がデジタル技術によって往年の史劇大作を再び製作できる土壌を開拓してくれたのを嬉しく思っていたが、本作以降、続々と歴史大作が製作されているらしいので、楽しみにしている。
 「トロイ」に関しては、一般の評判や実際の完成度よりも若干高めの評価になってしまったが、言ってしまえば60年代のスペクタクル史劇の悪い点も忠実になぞっていて、大味で単純なハナシである。
 本来「トロイ」を観る前に「トロイのヘレン」を観たかったのだが、ビデオが発売されておらず、DVDが今回の上映を機に発売される。「トロイのヘレン」(何故かDVDは原題通り「ヘレン・オブ・トロイ」)はロバート・ワイズが監督した1955年の作品で、トロイ側から描いているということだ。双葉十三郎は「ぼくの採点評」で、破滅させられる側から描いているのでスッキリしない。ギリシャ側から描くべきだったと批評している。
 確かに、映画にはなりにくいハナシで、王子の弟のアホが敵国の王の妻と不倫して自国に連れ帰った為に戦争になり、木馬計略に騙されて滅亡するという実にアホらしいハナシで、これをトロイ側から描いて面白くするにはかなり難しい。
 「トロイ」ではブラッド・ピットを中間に置き、双方を描いている。この作品はブラッド・ピットのスター映画なので、アウトローのピットというイメージを先行させて映画にしている。当然作品中に歪みは散見でき、職人監督ウォルフガング・ペーターゼンとしても手におえなかったようだ。まず、肝心のヒロイン、ダイアン・クルーガーが美しくない上に、ローズ・バーンも精彩に欠ける。これは致命的で、作品の根幹のヘレン役が映画的魅力に著しく乏しいモデルの姉ちゃんと、ピットと恋仲になるのがローズ・バーンでは、無理なハナシだ。製作費とピットのギャラで、女優のギャラが回らなかったとしか思えない。
 又、ピットの存在が単なるハミだし者としか機能しておらず、そこへ本編と遊離しても不味いからと唐突にトロイの国王がピットのテントへやって来たりと、強引な見せ場を作ってバランスを失していた。大体ピットは、この手のスペクタクル史劇の主役には線が細い。
 スペクタクルシーンに関しては、「グラディエーター」よりもデジタル技術が向上したこともあり、見応えはあるが、相変わらず数万人がびっしり並んで同時に止まったりするのが興醒め。同じ様な画になってしまうのも問題で、やはり往年の生の迫力には及ばない。
 中身がない割に2時間43分の長尺になってしまっているのも問題で、2時間にすれば遙に面白くなったと思う。
 肝心の木馬があっさり作られてしまい拍子抜け。全体としては凡庸な作品ではあるが、この凡庸さがスペクタクル史劇のある意味の面白さという一面もあるので、楽しんで観ていた。