AVの噂

molmot2004-08-03

 
 平野勝之の「由美香」を知ったのは1997年のことだった。当時BOX東中野で公開されて話題になり、庵野秀明の「ラブ&ポップ」に大きな影響を与えた。しかし、文化後進地域大阪では公開される気配もなく、諦め切れないところへ「由美香」のAVリリース版の「わくわく不倫旅行」を入手し、観る事ができた。AVドキュメンタリーの枠組みを越えた傑作に感動した。翌年には「わくわく不倫旅行2」(劇場公開タイトル「流れ者図鑑」)を観て平野の作術に完全にハマリ、以降平野の作品を探し「21歳」「水戸拷問」「わくわく不倫講座」「小室有里 LAST SCENE」といった秀作に接することができた。大阪でもようやく平野の作品を劇場で観る機会があり、オールナイトで「由美香」「流れ者図鑑」「わくわく不倫講座」を観たものである。2000年には一般作品となった「白 THE WHITE」の公開に合わせて平野の初期作「狂った触覚」「砂山銀座」「愛の街角2丁目3番地」を観ることもできた。しかし、ここまでである。自転車三部作完結編と銘打たれた「白」以降、平野の活動はそう大きな話題になることもなく、又こちらも積極的に平野の新作AVを観る努力を怠った。かろうじて「Fカップ二人旅」という「白」のアンサーAVを偶然見つけて観たぐらいである。後は「いたいふたり」の撮影を担当していたという記憶ぐらいのものである。平野同様、秀作AVドキュメンタリーを量産しているカンパニー松尾バクシーシ山下に関しても同じで、ここ4年程どういう作品を製作しているのか全く知らない。往年のピンク映画以上に製作本数の多いアダルトビデオに、作品的価値を求めても観たい作品の入手は難しく、又ドキュメンタリーという視点で求めるのは、本来のAVの製作意図とは異なる為、情報が極端に少ない。実際、平野勝之の作品等、ドキュメンタリーとしては素晴らしいが、AVという枠組みで観た場合、商品として成立していると言える作品は少ない。何せ肝要のカラミすらない作品があるのだから。
 
 「映画芸術」の最新号の小特集において、カンパニー松尾ハマジムという新レーベルを立ち上げたことを知った。映芸でわざわざ取りあげたのは、ハマジムからリリースされる作品の中に「あんにょんキムチ」の松江哲明の新作が入っているからで、「アイデンティティ」という在日三世のAV女優と、中国の留学生でAV出演している女性を描いたドキュメンタリーAVであるという。
 他の作品も松尾、山下、平野等が揃い踏みしており、殊に平野がこれで何度目かという冬の北海道へ自転車で走破する「UNDER COVER JAPAN 北海道・東京・沖縄03-04」や、松尾の作家性が最大限発揮されているであろう「レディコミ志願兵出張撮影ドキュメント オークション02/巨乳ちゃんと不思議ちゃん 〜広島・福山・岡山・ミナミ・郡山編」はかなり観たい。
 彼等の作家性が存分に発揮され、その分、平野や松江の作品にはAVからの逸脱が激しくなるであろうが、ここからドキュメンタリーの革新的な秀作が生まれるのは間違いない。


 HMJM http://www.hamajim.com/mein.htm
 http://d.hatena.ne.jp/spz/20040713でも紹介されています。