イベント 『愛と残酷のアダルトビデオ上映会とライブ』

「ハマジム×ハプニング presents『愛と残酷のアダルトビデオ上映会とライブ』」(UPLINK FACTORY)  

 以前記したカンパニー松尾の新レーベル・ハマジムがオールナイトイベントを行うので、アルトマンの新作を観終わるとUPLINKへ向かう。
 冒頭からゴールドマンが、ネット通販のみで苦しい経営のハマジムの哀愁を歌っていたが、個人的には「大開脚」シリーズを一時期まとめて観た際のゴールドマンの喋りが印象的だったので、そのまんまな風貌で嬉しかった。押井守に酷似している。
 司会はカンパニーと林由美香。「由美香」への思いが強い者としては、後ろに平野勝之が座る中、由美香が居ることに些か感動を覚える。OPとして、ハマジムの紹介Vが流れ、引き続き「identity」監督の松江哲明の登場となる。「identity」のダイジェストが流れるが、期待以上の感があり、DVDを早々に購入せねばと思わせる。AVとしては全く機能しないだろうが、ドキュメンタリーとしてはかなりの完成度に達している予感が。松江自身は一般映画と並行して最近はAVも量産していると聞いていたが、遂に自らハメ撮りも始めたらしい。恐らくそういう展開になるであろうとは想像していたが、松江がカラミに参加し始めた映像も流れていたが、いよいよ覚悟を決めたということか。ただ、世間的には仕事の幅が限定されてくる可能性もあり、イロイロ言われる可能性も認識した上での結論なのだろうが、やるからにはカンパニーの諸作や平野の「水戸拷問」にあるようなAV監督として、商品として、成立させられるだけのプロとしての手腕が求められると思うが、松江のAV作品を未だ観ていないのでそのあたりがわからないが、やるからにはそこに徹したものを作って欲しいとは思う。
 続いて「ビデオザワールド」の今年上半期1位とかの男優兼監督、黒田が登場し、彼のお蔵入り作「BATH ROOM」が流れた。全く未知のヒトだが、最近のAVでは有名なのだろうか?作品は、10分程に再編集されていたので全貌は明らかではないが、29歳だかの黒田ファンの頭のおかしな女を呼び出して、飯能のニューハーフの家でシャワーを浴びてるスキにゲイの男優2人をバスルームに投げ込み、輪姦させるというドキュメントで、鬼畜系AVとしては笑える要素も多く、悪くなかった。平野が後でしきりに感心していたが、絶頂期の平野作品に通じる鬼畜さがある。次々と中出しして、ニューハーフも含めた相互フェラチオが続く悪夢の様な光景に、お蔵入りになるのも深く頷けた。ラストは深夜2時に頭のおかしな女を飯能の路上に放置して終わる。流石に客席から中出しの危険性を問う声や、女性客の拒絶っぷりを感じたが、もっとエンターテインメントに突き抜ければ、平野作品の様な鬼畜と笑いと感動が一体となるのだが、これでは単なる鬼畜なだけで、黒田が撮影に徹しているだけではなく、その場に積極的に飛び込み、破壊し、混乱と絶叫を引き起こす主体になれば、もっと面白くなったと思う。
 次はハマジムの社員監督堀内ヒロシの新作「未確認淫行映像(仮)」の予告が3パターン上映されたが、私の連れのヒトがエラく気に入り、発売されれば絶対購入すると言っていたが、確かに奇妙な魅力を感じた。うるるまみ、という新人女優なのだが、典型的不思議ちゃんで、「アキバ系ファンが15人欲しい」と言っているのだが、内容は金沢のUFOの街へ向かい、宇宙人を呼ぶという内容らしい。これで、どうAVとして成立させるのか不明。
 そして愈々平野勝之の新作の先行上映となる。
 

1)「UNDER COVER JAPAN 第一部・北海道」          (UPLINK FACTORY) ☆☆☆★★

2004年 日本 HMJM カラー スタンダード 52分 
監督・出演/平野勝之
 今回のイベント最大の期待というか、これを観るために行ったというべき平野勝之の新作は、「白THE WHITE」に引き続き、冬の北海道を描いている。
 この作品は12月に発売予定だが、平野・カンパニー・真喜屋力のオムニバスとなっている。しかし、平野作品は女一人出てこないし、AV的要素は皆無で「白」以上に一般作品だ。真喜屋力の作品も沖縄の帰省を描いているらしく、唯一カンパニーがAVとして作るらしい。こんなものをAVとして発売しようとするハマジムの凄さには驚くが、今回観る事のできた「UNDER COVER JAPAN 第一部・北海道」は、流石の完成度を誇っており、ドキュメンタリーの佳作として広く見られるべき作品だ。
 AV版を改題して公開された、夏の東京〜北海道を走破する「由美香」「流れ者図鑑」、平野単独で冬の北海道を走破する「白THE WHITE」、(平野の弁によるとAVで他にも何本か北海道モノを撮っている模様だが詳細不明。)そして今回も同様に冬の北海道が描かれているが、今回の主目的は大晦日から元旦を日本の最北端で迎え、そこに集う者たちを描くことにある。「由美香」以来、旅の過程で遭遇する流れ者達を、平野は非常に愛情ある視点で捉えていく。彼が遂にはAV女優の同行はおろか、AVとしての枠組みを捨ててまで作品化しようとしたのは、流れ者達に強く惹かれたからだ。と言っても、これは平野の性格的なものだろうが、必要以上に踏み込んだり、親しくなりすぎたりはしない。それがたまらなく好ましい。あくまで偶然擦れ違うヒトとしての枠組みを踏み外さない。そこにある平野の限りなく優しい視線が感動的だ。
 本作は、自転車三部作に続く良質な佳作だ。平野によると、既に今夏、またしても40日に渡って北海道へ自転車で走ってきたという。やはり流れ者達を撮りたくて行ったとのことで、これは映画として公開するという。「白THE WHITE」公開時には劇映画製作をも漏らしていたが、結局また自転車で北海道へ行ってしまったと語っていたが、企画していた「テロルの決算」は是非実現してほしいと思う。そして、「白THE WHITE」のソフト化と自転車三部作のDVD化を願いたい。因みに平野と林由美香が同席しないのは確執があるのだろうか?


 この後、イベントはカンパニーの非AV作品―、川本真琴のPV等を流していたが、ハメ撮り手法で対象に迫るハンディカムの軽快さが出ていて、悪くはないが、PVという枠組みでは本領発揮とは言い難い完成度だった。ラストは豊田道倫のライブとなり、イベントは終了。

 ドキュメンタリーの革命的存在となることは間違いないから、常に期待していきたいと思うが、それにしてもこんなやり方で商業的に成り立つのか、かなり心配である。