映画 吉田喜重 変貌の倫理「樹氷のよろめき」

molmot2004-09-30

1)「樹氷のよろめき」 (ポレポレ東中野) ☆☆☆★ 

1968年 日本 現代映画社 モノクロ シネマスコープ 98分 
監督/吉田喜重  出演/岡田茉莉子 木村功 蜷川幸雄 赤座美代子

 松竹との提携4部作最終作に当るが、それだけにややくたびれた感がある。勿論吉田喜重としか言い様がない素晴らしいショットが溢れていて、駅でのシークエンスや、インサートされる石炭車に石炭を積む男たちなど素晴らしい。
 前作「炎と女」が観念性を突き抜け過ぎて演出が追いつかないぐらいにまで達していたのを杞憂した石堂淑朗が明快なメロドラマに立ち返ろうとしたらしいが、吉田と意見が合わず、これが現在のところ最後のコンビ作となっている。
 若き蜷川幸雄の下手糞な演技が見物ではあるが、ラストの蜷川の遺体を引っ張って下山していく喜劇的シチュエーションが美しい。この作品もDVDでもう一度だ。

 これで『吉田喜重 変貌の倫理』も終了だが、結局僅か6本しか通えなかった。しかし、松竹時代、松竹提携時代の未見の作品の大部分は観られたわけで、大きな収穫だった。ただ観たかった「日本脱出」並びにドキュメンタリー作品を見逃したのは痛いところ。後はDVDで補完する予定。2回吉田喜重岡田茉莉子を見られたのが幸い。