映画 「SURVIVE STYLE5+」

molmot2004-10-22

1)「SURVIVE STYLE5+」 (ヴァージンシネマズ六本木ヒルズ) ☆★

2004年 日本 カラー ビスタ 120分 
監督/関口現  出演/浅野忠信 橋本麗香 小泉今日子 阿部寛 岸部一徳

 「下妻物語」に転がるか、「茶の味」に転がるかと思わせた本作は予想通り「茶の味」側に転んだ。しかも「茶の味」より遥かに劣る。
 CM監督の映画進出著しい昨今、これが初映画作品となる関口現は、盟友多田琢脚本による本作で、これまでの日本映画にない切り口の作品をと意気込んだようだが、驚く程既成のイメージからの影響が濃厚な作品になっていた。具体例を挙げていけばキリがないが、「マグノリア」やガイ・リッチーの初期2作、キューブリック、リンチといった非常に明解なネタ元からの影響が伺えた。以前、「ラン・ローラ・ラン」の絶大な影響下のCMを製作していたことからも、既成のものからの発想という要素の強い方々なのかもしれない。
 浅野忠信橋本麗香の夫婦喧嘩、岸部一徳の一家、小泉今日子のCMプランナー、津田寛治等の空き巣といったエピソードが入り混じって描写され、夫々が部分的に融合しているというありきたりの構造で、肝心の各エピソードが極めてつまらない。いや、無数の面白くなりうる要素が散りばめられており、関口現の演出も悪くないのだが、ここまで絵に描いたようなCMの発想で撮られた映画は珍しく、従って30秒、せいぜい2分程度しか持たない演出が施されており、そのリズムで2時間見せられてもズタズタに裁断されたフィルムを目にしているようなもので、CM集を見せられたような印象にしかならない。
 結局、やりたい要素を詰め込みすぎているとしか言い様がなく、一般にこの作品への批判として語られるハナシがないとかいう批判はしても仕方なく、ハナシなどというのは複雑なプロットを必要とするわけではなく、ボーイ・ミーツ・ガールであるとか、バディフィルムであるとか、単純な要素が底辺にしっかり敷き詰められていれば、映像でいくら遊んでもブレない演出を心掛ければ問題ないのだから関口現は120分のフォーマットで何を見せるかに腐心し過ぎた結果、見せる側だけしか残らず、僅かに敷いてあったろうプロットが隠れたために、幾つかの悪くない映像を見せただけで終わってしまった。小泉今日子に悪女を演じさせるという優れた発想を持ちながら、非常に拙い演技を露呈させてしまったことの責任は重い。