イベント 「『とめられるか!?この俺を』(ワイズ出版)刊行記念 若松孝二×足立正生トークショー」

「『とめられるか!?この俺を』(ワイズ出版)刊行記念 若松孝二×足立正生トークショー
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 「性輪廻 死にたい女」の上映後、若松、足立、平沢剛によるトークショーとなったが、若松は先日も近くで見たから良いとして、遂に足立正生を生で見ることができて些か感動した。思えば高校生頃から足立正生に興味を持ったものの、資料はなく、自称映画監督であるとか、日本赤軍メンバーのテロリストであるという権力側の一方的印象を与えられていただけだった。その後、1998年の若松作品のリヴァイヴァルに乗じて復刊された「俺は手を汚す」で、ようやく足立の略歴の一部を知ることができた。そして2000年の強制送還により26年振りに帰国した足立を思いつつ同時期に開催された「足立正生全作上映」に通いながら「映画芸術」の足立特集号を読みつつ、より足立に魅了された。幸いにして罪状は偽造旅行券行使程度だったので、2001年には釈放され、「映画/革命」が出版され、そして今、目の前に足立正生が居るわけだ。
 トーク自体はとりとめのないもので、詳細を記すほどのものではないが、足立が天皇という言葉を口に出した時に、こちらが勝手に緊張漲らせたことは兎も角、足立が珍しく語気を荒めて日本映画を駄目にした二人、と言い出した時、即座に黒澤明山田洋次だと思ったが、山田と崔洋一を指している模様。言葉を濁していたので、はっきりとはわからないが、あるいは北野武をどう思っているのか、とも思った。
 足立の34年ぶりとなる新作劇映画「十三月」は、来年クランクイン予定とのことだが、プロデューサーに名前を連ねる若松は2億1千万もの予算はとても不可能で、もっと小さな話をやれとこぼしていた。
 又、以前から聞こえていたあさま山荘事件を山荘内部のみで描く作品の構想も語られ、佐々淳行の大嘘や、突入せよ御殿を建てた監督の作った映画のようなものだけでは、あさま山荘事件の真実は描けないとする若松の主張は正論で、あんな事件当時留学していて何も知らないに等しい原田眞人が、伊丹十三の如き警察の宣伝映画に利用される程度の事件なのか、あさま山荘事件は、と思う。
 「17歳の風景 少年は何を見たか」に足立が脚本協力をしていて、在日韓国人老婆が少年が去り際に振り返ると17歳の少女になっているという設定は足立によるものということが明らかにされた。
 トーク終了後、先行販売されていた「時効無し」に若松のサインを貰う。その際、「17歳の風景」とても面白かったです。と大嘘を言った。