映画 「レディ・ジョーカー」

molmot2005-01-14

4)「レディ・ジョーカー」 (品川プリンスシネマ) ☆☆☆

2004年 日本 カラー ビスタ 日活 121分 
監督/平山秀幸   脚本/鄭義信   出演/渡哲也 徳重聡 吉川晃司 國村隼 大杉漣

 原作は読んでいないので比較することはできないが、鄭義信の脚本で監督が平山秀幸という布陣であっても、おそらく原作に書き込まれているのであろう膨大な情報量を処理することはできなかったようだ。
 聞いていた通り、グリコ・森永事件をまんま換骨奪胎しているので、その方面の関連本を一時相当読み込んだ者としては、興味深くもあったし、楽しめたのだが、それなら阪本順治で「かい人21面相」という作品を作れば良い訳で、「レディ・ジョーカー」としてのフィクションの面白さが希薄だった。
 被差別部落、在日という問題が、メジャー作品で取り上げられるのは稀有な例だし、鄭義信だけにそのあたりの処理がうまいのだが、動機付けと、犯行グループの関連が不明慮で、まあ2時間でやれというのが無茶なのだが、犯行グループと警察内部、ビール会社を均等に描くのは無理で、いずれかに絞った方が良かったのではないか。
 渡哲也はスクリーン栄えする残り少ないスターの一人だと思うし、近年の「誘拐」や「時雨の記」でも映画の完成度や渡の演技は別にして、スクリーンで存在感を示せるヒトだと思うので、本作で32年ぶりに古巣日活映画に主演したのは嬉しいのだが、動きにこそ魅力のあった渡が老人役を演じるのは演技力を考慮しても難しいものがあった。
 それにしても酷いのが長井秀和と似ている徳重聡で、こういう古めかしい顔を選んだ石原プロも問題だが、これだけの大役にも係わらず同じ顔しかできない大根ぶりで、吉川晃司への追求ぶりも「砂の器」並にカンと行き当たりバッタリにしか思えなかった。
 犯罪映画としての魅力に著しく欠ける凡作だった。