読了 「春の雪 豊饒の海(一)」

15)「春の雪 豊饒の海(一)」 三島由紀夫 新潮文庫 ☆☆☆★★★

豊饒の海 第一巻 春の雪 (新潮文庫)
 「豊饒の海」シリーズは、そのうちと思いながら十数年避けてきたが、行定勲が映画化してしまうので流石に読まないわけにはいかず読むことに。
 「春の雪」は、実にわかりやすいメロドラマで、ベタ過ぎるぐらいだが、ハナシの流れも心地良く読めた。
 ただ、中学生の頃「金閣寺」や「仮面の告白」を読んで圧倒された、という程の凄さを感じるわけではなく、これから残り3作を読んでどのような感興が起きるかと。
 それにしても、行定勲はよくこんなものに手を出したなと。篠田昇亡き後、撮影にリー・ピンビンを起用したのは悪くなく、どんな画が来るか大体読めるが、問題は脚本で、佐藤信介・伊藤ちひろである。佐藤信介は確かに「ひまわり」や「ロックンロール・ミシン」で行定と組んでいるし、監督としても知られているが、三島作品の映画化は難しいので不安だ。和田夏十ですら、「炎上」(「金閣寺」の映画化)では原作に真っ向からぶつかるのではなく、一度解体して、作者の創作ノートに沿って脚本化している。三島の戯曲に忠実に映画化した市川崑の「鹿鳴館」の失敗の事例もある。