書籍 「日本映画の21世紀がはじまる―2001→2005スーパーレビュー」

7)「日本映画の21世紀がはじまる―2001→2005スーパーレビュー」阿部嘉昭 (キネマ旬報社) 

日本映画の21世紀がはじまる―2001‐2005スーパーレビュー
 「日本映画が存在する」の続編的色合いの時評集。但し版元は今回は古巣キネマ旬報社
 「映画芸術」誌に掲載された原稿がそれなりの割合を占めているので、リアルタイムで読んでいるものが多いが、それでも半分以上は未知のもの。
 阿部嘉昭の名前を意識したのは−、記憶で書くから合っているかどうか心許ないが、1993年6月上旬か下旬のキネ旬で「アサシン」が表紙の号での「大島渚1960」出版を期に組まれた特集で、大島へのインタビュアーを務めた阿部が、大島の作品中「東京占戈争戦後秘話」が突出して好きだと吐露し、それを受けて大島が「凄く変態ですね」と返したのが鮮烈な印象として残った。以降の阿部の記憶は1995年以降の「映画芸術」となるが、以前も書いたが自分は、この頃阿部和重阿部嘉昭を混同しており、だから阿部嘉昭は冷酷な眼差しのヒトに違いないと思っていたのだが、先日実写で初めて見たら、絓(スガ)秀実似のヒトだった。
 正直言って、この方の評論が完全に自分と波長が合うかと言えばそんなことはなく、半分程共感できるというところか。そもそも映芸の星取表にしても、阿部は常時点数が高すぎて、新人の酷い作品を高評価し過ぎる嫌いがあった。
 とは言え現在の日本の映画評論家の中では、最も信頼できる数少ない一人だ。大体、「美しい夏、キリシマ」がキネ旬ベストワンになった時、作品の存在すら知らないと平気で書いた馬鹿映画ライターがあれだけ多かった国である。阿部のような兎に角分け隔てなく観て、書くというだけで凄いことなのだから。
 と言うことで、読むのが楽しみだ。