訃報 林由美香死去


 昨日から、『林由美香』や『平野勝之+林由美香』『カンパニー松尾林由美香』『松江哲明+林由美香』などという検索で来るヒトが幾つか見られたので、何だろうと思っていた。イベントなり、新作でもあるのかと思った。又、 松江哲明の名前まであったので、林由美香と組んで何か撮るというような、そんな胸の高鳴る展開の予告でもあったのか、などと思った。しかし、結果は全く予想もしていなかった、あまりにも悲しい結末となった。
 映画「由美香」で林由美香を知った自分にとっては、なかなかAV女優として、またはピンク女優としての林由美香を受け入れることができなかった。あまりにも「由美香」が素晴らしく、崇高過ぎて、林由美香は「由美香」の中でのみ生き続けているかの如き非常に偏った、そして誤った概念が長らく取れなかった。そのせいで、女優としての林由美香の認識がかなり遅れてしまった。この誤りに気付いたのは、ここ二年程のことであり、更にこの誤りが、既に素晴らしい女優として存在していた林由美香を見て見ぬふりをしていたことになっていたと心から思わせられたのは何と「たまもの」を観てからになるのだから、我ながら呆れる。作品としては、個人的にはさほど好きではないが、林由美香がこんなにも良い演技ができるということに驚き、自身の不明を恥じずにはいられなかった。だから自分には女優としての林由美香を語るものを何も持っていない。
 昨年のハマジムのイベントで、酔ってグダグダになりながら愛らしい姿を見せていたり、2ヶ月前の第17回ピンク大賞で司会を務めつつ主演女優賞を受賞した華やいだ幸せそうな姿を見ることができたのが、個人的には良かったと思っている。そして、それが最後となった。
 あの時、主演女優賞を受賞する際に見せた涙も忘れ難い。又、脚本賞を受賞した吉行由実が、次回作は会社を説得できたので久々に林由美香の主演で撮ると語り(「たまもの」[熟女・発情 タマしゃぶり]のような作品は例外で、年齢的問題から林由美香の単独主演という形は減っている)、由美香も嬉しそうにしていた。その作品が9月に公開される「ミスピーチ 巨乳は桃の甘み」で、これが遺作となってしまうとは。
 まったくなんということだと思う。今、正に絶頂期が始まり、これから末永く続く筈だった。今後年齢を重ねれば重ねる程、更に魅力が増していったのは間違いない。主演でも脇でも良い位置に収まっただろう。絵沢萌子以上の存在になったに違いない。残念ながら一般映画、TVでの出演は数える程だが、幅が物凄く広いヒトなので、色々な作品で観たかったし、又、それは今後実現できる筈だった。
 最後に、以前「由美香」をはじめて見た頃のことを書いたものを上げておく。初見時の興奮が僅かでも伝われば。
 因みに、林由美香の死去の報は業界内の知り合いから報道より若干早めに貰ったが、報道されて以降、友人、知人から一斉にその旨を記したメールが届いたが、「由美香」なり、林由美香のことを、さして話した記憶の無い奴からも来たのが不思議だったが、聞けば学生の頃、恐らく「由美香」を初めて観た頃(大阪では「由美香」公開のメドが立たず、痺れを切らした自分は、AV版があることを知り、阿倍野TSUTAYAで「わくわく不倫旅行」を探して観た)、自分はあまりの面白さに誰彼かまわず、「由美香」のハナシをしたらしい。果たして、「自転車でAV監督とAV女優が北海道へ‥最後はラーメンにウンコが‥凄い傑作で、泣いた‥」等と興奮して喋っていたでろうから、その面白さが伝わったのかどうか‥
 前述した様に、自分は女優としての林由美香を知らないに等しい。彼女が出演している作品で観ているものは、10本に満たない。即ち追悼する資格すら有していない。林由美香の追悼は、あの膨大な出演作を観られる範囲で丹念に観て行くことから始められなければならない。
 心からご冥福をお祈りいたします。