映画 「リチャード・ニクソン暗殺を企てた男」

molmot2005-07-06

107)リチャード・ニクソン暗殺を企てた男 」[THE ASSASSINATION OF RICHARD NIXON] (テアトルタイムズスクエア) ☆☆☆★

2004年 アメリカ カラー ヴィスタ 96分 
監督/ニルス・ミュラー     脚本/ニルス・ミュラー ケビン・ケネディ    出演/ショーン・ペン ナオミ・ワッツ ドン・チードル ジャック・トンプソン
 
 テロリスト映画は無条件に支持しがちで、「バトルロワイアルⅡ」ですら開巻のテロ描写が良かったので罵倒できない。
 本作や、「テロルの季節」の様なラスト迄を地味な日常描写に徹する作品は殊に好きである。
 駄目駄目な男が何もかも裏目に出て、社会をこんなに悪くしているのはニクソンだ、というわけでハイジャックしてホワイトハウスに突っ込もうとした、というだけのハナシだが、下品な映画みたいに、これ見よがしに鬱屈を描いたり、ドラマを作りこもうとせずに、淡々と日常を描いているのが好感を持った。
 これが初監督となるニルス・ミュラーの、主人公への愛情ある突き放し方が良く、決して見下してはいない。この駄目な奴への愛情ある視点は、山下敦弘の「どんてん生活」にも通じるものがある。
 ショーン・ペンは好きだし、巧いのだが、今回はやり過ぎにも思えた。演出が淡々としているのに演技で説明過剰にし過ぎではないか。ラストに至ってようやく、いつものショーン・ペンに戻ったと。
 96分という無駄のない尺なのが良い。又、カメラは手持ちが多いが、節度ある使用に留まり、ショーン・ペンが腰掛ける、立ち上がるという動作に共について動くカメラの動きや、ショーン・ペンの後方から捉えた画面下手に彼の頭が1/3程入った構図も多いが、これらが、不安定なペンの心情がダイレクトに伝わってくる。
 突出した作品ではないし、犬の射殺も十全たる効果を上げてはいたが、もう一押し主人公とニクソンの距離が決定的となる転換点が欲しかったし、日常の営みが狂い始める過程が、序々に序々に、観客にそれとわからないように溜まっていくという見せ方をして欲しかった。
 全体としては品の良い佳作だった。低予算映画だから間違っても「アポロ13」みたいに、夢の中と称して月面に立つシーンや宇宙船が爆発するシーンの如き商業主義への妥協的作品の根幹を壊すシーン、つまりは白い家に突っ込むシーンがなくて本当に良かったと思う。

 作品とは関係ないが、水曜千円なのは良いとして、パンフレットがペラペラの癖して千円もしたのは腹が立った。タイムズスクエアに突っ込んでやろうかと思った。