書籍 「『仁義なき戦い』取材ノート」「ガイナックス・インタビューズ」

16)「『仁義なき戦い』取材ノート」笠原和夫  (太田出版)
17)「ガイナックス・インタビューズ」堀田純司 (講談社)

「仁義なき戦い」調査・取材録集成 ガイナックス・インタビューズ
16)笠原和夫の関連本はどれも面白いが、とうとうこんなものまで出た。笠原の取材の綿密さは有名だが、その一端が伺える。しかし、個人的には「仁義なき戦い」シリーズは大好きだが、モデルとなった人物達の実際の動向といったものにそう興味はない。それにこの本、取材メモを纏めているから、文字がスカスカなのに3200円もする。だから買おうか否か迷ったが、巻末に「仁義なき戦い」の執筆開始から「仁義なき戦い 完結篇」の打ち合わせに出向き、資料を高田宏治に渡して降板するまでの日記が掲載されていたので、これ読みたさに購入。
 しかし、「昭和の劇」という濃厚極まりない名著を出した太田出版の割には資料の解析が薄い気が、パラパラ読んだ限りではする。やはり荒井晴彦が入っていないからか。せめて巻末の解説文は、森達也ではなく荒井晴彦に書いてほしかった。今回書籍化された資料は高田宏治に渡したものなのか違うのか、とか。とは言え、読むのが楽しみな本だ。
 17)GAINAXのインタビュー本は「スキゾ・エヴァンゲリオン」とか「パラノ・エヴァンゲリオン」とか「のーてんき通信」とか読んでいる程度だが、80年代オタクが集団でモノ作るのを眺めるのが好き、とかいうどうでも良い興味のせいで、Web連載してたのを纏めただけの2700円する本書を購入。

 因みに立ち読みしただけだが、「多重映画脚本家桂千穂」が面白そうだった。桂千穂のロングインタビューで纏まられた本書の個人的最大の興味は、「女王蜂」の脚本に参加したハナシだったりするが、大林宣彦への愛情と「あした」が長過ぎるという率直な感想等良かった。興味深かったのは、もうコンビ解消したのかと思われた大林の関係とコンビ新作について、「チャーリーズ・エンジェル フルスロットル」公開後、中国で同じ様な女性武術アクションを撮ってくれと言われ、大林と桂でシナハンに向かったが中止になったと語っていた。その他、熊井啓と組んだ未映画化シナリオ「宴のあと」、筒井康隆と共同執筆した「大魔神」等、映画化されなかった作品についての言及が面白かった。いちばん驚いたのは「シベリア超特急2」のオファーが、初めは桂千穂にも行っていたということだろうか。