訃報 映画監督 石井輝男死去

 今月20日にフィルムセンターで「成瀬巳喜男シンポジウム」が行われ、ゲストとして石井輝男の名前が告知されていたので楽しみにしていた。「おかあさん」を初めて観た時、助監督に石井輝男とあったので驚いた。
 それだけにそんなに悪かったのかという思いと、秋にはDVD BOXも出るという時だっただけに、正に何度目かの再評価の時期が到来していただけに残念でならない。「ゲンセンカン主人」以降、リアルタイムで新作に接することができ、又長いインタビュー本がまとまっていることを良しと考えるしかないか。
 「ねじ式」が素晴らしい出来栄えで、続いて太宰の「人間失格」をやろうとしていたとも聞くが、「地獄」「盲獣VS一寸法師」とカルトの声に応えるかのような作品まで作ってしまったことも今となっては石井輝男らしくて良かったのかもしれない。個人的には「ねじ式」の流れで行って欲しかったが、「地獄」は誠実な作品ではあった。オウム事件全般を再現しようなどという大胆さを持った監督など他には居ない。「盲獣VS一寸法師」は昨年ようやく劇場公開されたが、2001年のPFFのプレミアム上映で観た。フィルムと豊潤な予算を石井輝男にあげたいと思った。
 高倉健でもう一本やろうと思っていて本人もやりたいと言っている、などと言っていた石井輝男の言葉が実現すれば、もっと日本映画も高倉健も面白くなったのに、と思う。
 「徳川女刑罰史」「残酷異常虐待物語 元禄女系図」「徳川いれずみ師 責め地獄」「ポルノ時代劇 忘八武士道」「江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間」「直撃!地獄拳」「直撃地獄拳 大逆転」と、楽しんだ作品の数々が思い出される。しかし、未だ1/3も観ていない。これから石井輝男の未見の作品を新作として観ていかなければならない。
 冥福を祈る。