映画 「忍 SHINOBI」「スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐」

molmot2005-10-09

191)「忍 SHINOBI」 (Tジョイ大泉) ☆☆★★

2005年 日本 「忍―SHINOBI」パートナーズ カラー シネスコ 101分
監督/下山天    脚本/平田研也     出演/仲間由紀恵 オダギリジョー 黒谷友香 沢尻エリカ 椎名桔平

 東宝の万人受けを狙いすぎた大味路線よりも松竹を支持したいと常々思ってはいるのだが、「阿修羅城の瞳」やらこうも東宝の二番煎じ番組が続き、それも悉くコケているとなると情けなくなる。
 本作は山田風太郎の傑作を原作にしているが、確か製作発表当時は本木克英の監督で、タイトルも原作のまま「甲賀忍法帖」だった。
 それが何故「忍 SHINOBI」となり、これまで極めて凡作としか言いようがない作品しか撮ってこなかった下山天に交代したのか謎だが。ま、山田洋次批判を公然と口にする本木克英の松竹内の立場の心配と、また山田洋次程の力量がないことから「甲賀忍法帖」が果たして手に負えるのかと不安に思ったものだが。
 開巻から直ぐにわかるように、ようは「HERO」や「LOVERS」のような作品を目指したらしい。しかし、ハナシを面白く転がせないなら、せめて映像だけでもそれなりに見せてくれても良いのに、それもない。雰囲気のみを僅かに真似ているだけだから、とても観ていられない。ただの愚作である。
 大体、この系列の時代劇を手掛けられる監督が果たして現在いるのだろうか。ベテランの滝田洋二郎は「陰陽師」シリーズが、才ある滝田には珍しいくらい凡作だったのに、ヒットしてしまったものだから本人もこのジャンルは得意と勘違いしたのか、若松孝ニが陰陽師御殿を建てた滝田と皮肉ったように依頼が来るまま受けて、松竹でも「阿修羅城の瞳」というこれまた水準を大きく下回る凡作を作ってしまった。同じくベテランの金子修介も「あずみ2」がこれまた酷かったし、では若手監督ならばと目を転じても北村龍平の「あずみ」程度が最もマシに見えてしまう。テンガロンハット被ったピースなオッサンの「RED SHADOW」まで含めても、面白かったものが1本もない状態で、やはり深作欣ニや斉藤光正の「里見八犬伝」や「伊賀忍法帖」が良かったと言えれば良かったのだが、そこまで手放しに言えるものではない。しかし、監督も脚本も役者もここまで素人臭くはなかった。今となっては岩井俊二が広末涼子でイン寸前まで行っていた「あずみ」が実現していれば、また違った一面が展開されたか、あるいは同じ結果になっていたか観たかったとも思う。
 開巻から字幕で伊賀と甲賀の仲間とオダギリが恋仲であることが示される。だからもう良いなどと、思うわけがないが、信じ難いことに二人の恋愛描写は字幕で教えたのだからと何もしないのである。ただ二人が川のほとりで突っ立っているだけ。そして意味の無い切り返しが数度繰り返される。作品の根幹を担う二人の愛をこの程度の描写で担いきれるのだろうか。ま、お手本にしている「HERO」や「LOVERS」も、チャン・イーモウにしては映像側に走り過ぎて肝心な箇所が弱いのだが、それでもここまで酷くはない。
 家康が三代将軍を竹千代か国千代かに決める為に伊賀と甲賀にその代理戦争をさせる。各5人ずつ選び戦かわせ、戦い残った1人が駿府城へ向かう。オダギリは戦うことを拒否し、問い質す為に駿府へ向かう。一方仲間側やオダギリ以外は戦うことを選ぶ―となるのだが、101分という上映時間は決して短いものではなく、むしろ能無し若手監督が身内スタッフと共にメジャー進出を図って作った自称娯楽映画を2時間半かけて見せられるより、101分の方が好感が持てるのだが、その中で5人の対戦と仲間とオダギリの愛憎劇が見事な位描かれていない。まずもって5人のキャラクターすら覚束ない描写だし、見せ場の戦いも退屈。殊に坂口拓が出てくると、途端に脱色で目まぐるしいカット割りで森の中の対戦という、「VERSUS」もどきになるのは笑った。坂口拓だから「VERSUS」というのは工夫がなさすぎるし、大した出来ではない過大評価されすぎの「VERSUS」よりもアクションの作り方、切り取り方にしても面白くないのは、どう考えても不味いだろうと思う。
 沢尻エリカなど、まんまな感じで呆れるだけだった。皆さん、どーでもいい死に方にしか見えないのは、見せ方が悪いことにも起因している。
 映像美に走るなら走るで、それなりのものを見せて欲しい。篠田昇が健在だったら、未だ観れるものにしてくれたのだろうか。
 クライマックスが何故か砂丘なので、どこの場所のハナシだよと思いつつ(ま、静岡の海岸ってことにしてはあるのだが、距離感も移動感も微塵も感じさせない)、最も肝心な仲間とオダギリの対決が、ATGも吃驚な大ロングでそして唖然とするチャチさで見せてくれる。 ラスト近くの隠れ里攻撃中止の伝令が時間距離を無視したご都合主義だったりと、映像美に満ちた活劇が展開されることは遂に無かった。
 腹立ち紛れに言うが、「あずみ」や「バトル・ロワイアルⅡ」や本作でも出てくるあの要塞は、同じ様なものを作れと決まっているのであろうか。それなりに凝った作りにはなっているが、全く生かされていないので、何のために組んだのかと思ってしまう。
 因みにこの作品は松竹なので、「阿修羅城の瞳」同様松竹京都撮影所で撮ったのかと思いきや、東京ベースらしく、東映東京撮影所でセット撮影、オープンセットは、全く映画性を欠いた貧相なものにしか見えない例のワープステーション江戸で撮影しているが、撮影所がないと、所詮この程度にしかならない好例ではないか。東映京都撮影所も閉鎖の噂があるが、残さなければならないと語り、自身がリメイク権を購入した「用心棒」と「椿三十郎」をそこで撮ろうとする角川春樹は、その製作しようとしている作品に賛同するかは別として、撮影所の重要性を唱えているのは絶対的に正しい。 
 松竹は、ROBOT所属の平田研也に脚本を発注し、本木克英ではなく下山天に監督させ、仲間由紀恵オダギリジョーを押さえれば、東宝的なヒットを出せると踏んだようだが、せめてラブストーリーか、映像か、アクションに主眼が置いてあれば、ここまで酷くならず、又ここまで退屈しきることはなかったと思う。
 松竹は、山田洋次木村拓哉で「武士の一分」をやるらしいが、むしろ共産党山田洋次に貧乏人の映画を撮らせるよりも「忍 SHINOBI」を撮らせた方が、そこらの若手、中堅監督よりも遥かに見応えのあるエンターテインメントを仕上げてくれると思う。文芸映画やらも、またチラホラ作っているが、市川崑今村昌平に撮らせた方が面白いのは言うまでも無い。

192)「スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐」〔STAR WARS EPISODE III REVENGE OF THE SITH〕 (Tジョイ大泉) ☆☆☆★★

2005年 アメリカ 20世紀FOX カラー シネスコ 141分
監督/ジョージ・ルーカス    脚本/ジョージ・ルーカス     出演/ユアン・マクレガー ヘイデン・クリステンセン ナタリー・ポートマン イアン・マクダーミド サミュエル・L・ジャクソン
スター・ウォーズ エピソード3 / シスの復讐 [DVD]
 スターウォーズシリーズには格別な思い入れは無い。ま、普通にそこそこ楽しんで観ているだけで、熱心なファンの方ほど大傑作だとまでは思ったことは無い。佳作クラスの作品が前3部作で並んでいた。
 一応、昔からテレビ放送で前3部作を観、特別篇上映に合わせてビデオで見直してから劇場で特別篇3作を楽しみ、エピソード1、2と劇場で観てきた。という程度だ。
 「エピソード1」に関してはそれなりに楽しめた。「ベン・ハー」もどきのレースは楽しめたし。ただ構成、編集に緩急がないのは先日見直しても気になった。「エピソード2」も、初見時は何も考えずに観れば楽しめる程度に流していたが、再見するとやはり、不出来に思えた。前3部作の様な1本毎の表情の違いがなく、別に現シリーズを3本にする必然も感じなかったし、アナキンとパドメの呆れ果てる恋愛描写には参った。
 で、完結篇というか、「エピソード4」へのブリッジとなる本作だが、オチはハナからわかっているわけで、それも主人公が暗黒面に落ちていく様を見せるというのは、能天気なエンターテインメントである本作では至難の技であろうと思ったが、結局は順当な作りだった。
 開巻の議長の誘拐を例の字幕で処理して、救出に当たるアナキンとオビ=ワンの派手な活躍から入るというのは相変わらず巧いなと思うが、以降は完結の為のというか、辻褄合わせ用の終局へ向かう消化試合のようなもので、悪を真ん中に持ってきてどう展開させるのかという期待は、こちらの思いが大きすぎたようで、特に目新しくもなかった。
 それにしてもアナキン=貴乃花だなと観ている最中に思えて仕方なかったが。ま、これは方々で言われていることなので今更だが、大して教育受けずに若いうちからチヤホヤされた奴は、胡散臭いオッサンに心酔するんだなと。鍼灸師のオッサンが議長とは。
 後半は悲劇めいてくるが、やはりアナキンの暗黒側への転向が弱く、恐怖の扱いが観念的且つ、動機付けがパドメの恋愛描写同様幼稚なのは、ルーカスがこんなヒトだとは「スターウォーズ」以前の初期2作の感動を持ってすれば思えないのだが‥
 ジェダイ騎士達が案外あっさりやられ過ぎとか(もう少しジェダイの攻防が観たかった)、クーデーターの流れをしっかり見せてほしかったとかあるのだが、アナキンの黒こげには、やはり驚いた。主人公は片腕ないは、両足焼くはで阪本順治が観たら大喜びしそうな欠損映画になっていた。しかし、だからダース・ベイダーの扮装の理由づけになっていてなるほどとは思わせるし、ルークとレイアが生まれ、別々に育てることになり、各星に預けられるシーンはやはり感動的だ。
 個人的には新3部作は必要だったかどうか疑問に思うことも多いのだが、とは言え大円団を迎え、前3部作を潰さない程度の質で完結したのは良かったと思う。