映画(TV/VIDEO/LD/DVD)「酔いどれ天使」

57)「酔いどれ天使」(DVD) ☆☆☆★★★ 

1948年 日本 東宝 モノクロ スタンダード 98分  
監督/黒澤明    脚本/植草圭之助 黒澤明    出演/志村喬 三船敏郎 山本礼三郎 千石規子 中北千枝子
醉いどれ天使 [DVD]
 面白いけど、そこまで面白いと言うか、みたいな作品ってあるもので、自分にとって度が過ぎた面白さを発揮し始める大傑作を撮る黒澤と言うのは「野良犬」から。勿論それまでの「姿三四郎」は傑作だし、「酔いどれ天使」は秀作だと思うし、「わが青春に悔いなし」「素晴らしき日曜日」「虎の尾を踏む男たち」も佳作だが。
 「酔いどれ天使」は確かに面白いが、リアルタイムで観た方々の衝撃までは受けなかった。これは今に始まったわけではなく、10年以上前から「酔いどれ天使」を何度となく観て、さらには亡くなってから劇場でも観たが、突出した大傑作とまでは行かない。それが妙に引っかかる作品ということで常に気になっている。
 三船敏郎の魅力に尽きる作品で、あの破天荒な演技を受ける志村喬やメタンガスが噴き出る泥沼を中心にしたマーケットの一大セット、脇を固める千石規子らによって成立している。
 ヤクザ批判、ヒューマニズムを基調にしようとしながら三船の魅力が凄すぎて映画の流れが変わってしまう作品ゆえのバランスの悪さが欠点にして魅力だ。